息子は馬乗りになられ刃物を何度も振り下ろされた…殺人事件で最愛の息子を失った父親 変わり果てた姿に「ごめんな」 犯人は捕まっても「奪われた命はかえってこない」犯罪被害者の苦しい思い
意識戻らぬ息子に『お父さん、将太も休ませてあげてよ。寝かせてあげて』
病院へ搬送された将太さん。医師らによって懸命に心臓マッサージなどが行われ、心肺蘇生を試みられます。しかし… (堤敏さん)「医師から『脳波に反応がないんですよ。心臓マッサージをやめていいですか?』と聞かれました。私は『そんなんあかんでしょ、続けてくださいよ』と、言いかけた時、横から娘が声を詰まらせながら『お父さん、将太もう休ませてあげてよ。寝かせてあげてよ。頑張ったんやから、この子すごい頑張ったんやから』。そう言いました。帰る車の中で隣に座っていた家内がずっと一点を見つめて、『何でなん?何で将太なん?』と、何回も何回も繰り返し言っていました。私は私でもう感情が抜け落ちたようになって、呆然としているだけと。怒れない、泣けない、涙も出てこない。何をどう理解して、どう受け止めたらいいのかわからない。何が起こったのか。何が起こっているのか。何もかもが全くわからない。そんな状態で、朝を迎えました」
自宅に無言で帰宅した息子に「ごめんなとしか言えず、それが精一杯だった」
将太さんは、事件の翌日、10月5日、7時間にも及ぶ司法解剖を終え、自宅へ無言で戻ってきました。上半身は包帯で覆われ、顔と手首から先しか出ていない状態だった将太さん。縛られていた包帯を外すなどして、家族らは一晩中、将太さんに寄り添い続けたと振り返ります。 (堤敏さん)「リビングの真ん中に敷いた布団に息子を寝かせたときに、私は初めて涙が出ました。もう心の中では『将太おかえり。痛かったな、怖かったよな、苦しかったな、辛かったよな』と色々な思いを持っていたんですけど、『お父さんお前守ってやれんかった、ごめんな』、それも言葉にならずに『ごめんな』としか言えませんでした。それが精一杯でした。(将太さんの)手を握って温もりを伝えたら、指を動かしてくれるんじゃないかと。頬を温めたら、にこっと笑ってくれるんじゃないのかと。手や顔をなでたりさすったりしながら一晩中話しかけました。しかしそれは叶いませんでした。触った時は生きている時の温もりはもうなくて、触った瞬間にドキッとする独特の冷たさだけが伝わってきました。この夜が、私達家族が息子の死というもの、将太の死というものを受け入れさせられた時間だったのかなと思います」