融資を受けたいのですが…無借金・土地持ち“超高属性”姉妹の申し出に、銀行員が放った「まさかの一言」【不動産のプロが解説】
先祖代々受け継いだ土地や建物などの資産で、何もしなくても家賃収入を得て楽に暮らしている、と世間からは思われがちな「地主」たち。しかし、先祖や家族から受け継いできた大切な土地であっても、時に苦渋の決断を下さないといけない場合もあります。地主専門の資産防衛コンサルタント業に従事する松本隆宏氏の著書『地主の真実』より、令和時代の地主たちが抱える深刻な問題を、具体的な事例をもとに見ていきましょう。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
【家族構成】 近藤 和夫(姉妹の父、90代)、はな(姉妹の母)、近藤 澄江(長女・60代)、佳代子(次女・50代)、長男 ※すべて仮名 【あらすじ】 代々農業を営む地主である近藤家。本来跡継ぎとなるはずだった長男は、家族を顧みない性格のため、父親の和夫さんが勘当。近藤家の資産管理していた母のはなさんが脳梗塞で倒れて以降、澄江さん・佳代子さん姉妹が近藤家の資産管理を担当することに。姉妹は来たるべき相続に備え、所有不動産の見直しを始めたが…
築古アパートの売却→土地購入の「目的」とは?
父親は自宅近くに築30~40年の木造アパートを所有していた。満室だったが、不安要素の多い物件だった。入居者の中に年金生活者や無職の人が多く、年齢層も高かったのだ。懸念された家賃の滞納も実際にあった。 このアパートをより高く売るために、非公開で入札を実施し、一番高値をつけた買主に売却した。 姉妹はこのアパートの売却益で一つの土地を購入し、さらに2年後に、それまでご両親が不動産収入で積み上げてきたキャッシュで、もう一つの土地を購入した。 「土地を買う」ということは、要するに資産の形を替えるということだ。土地は、賃料などでお金を生み出し続ける。そして、必要に応じてまたお金に替えることができる。 土地購入には、資産評価を下げるという目的もある。 収益物件の土地選び どんな土地を購入するかが収益物件の成否を分ける。購入する土地は、建築会社がいくつかリストアップしてその中から私が選び、現地を確認してもらった。 姉妹だけでなく父親の和夫さんも一緒に、4か所ほど物件を視察した。最初はウォーミングアップのつもりだったが、和夫さんは一つの物件を即座に気に入り、「これを買う」と即決した。父親の迅速な決断に、同行した姉妹も驚いていた。 「無理に連れていくのはどうなのかしらと思ったのですが、連れていったら、即決だったので本当にビックリしました」(澄江さん) 「あとで説明して納得させるより、見せるほうが効果的でした」(佳代子さん) 和夫さんは、ビジネスや商売ではなく、長年地元で農業や地主業をしていた堅実な人だ。地元を知っているからこそ、その土地のよさを直感で理解していただけたのだろう。 私は、事前に1棟物件の購入メリットについてはお話していた。 1棟の物件なら、管理費や修繕費も自分でコントロールできる。1棟を30年所有し、ご自身の判断で適宜のときに売却も建て替えも可能だ。収益物件としての売却も考えられる。 このような柔軟性が重要だと私は考える。 ちなみにこの土地を私に紹介してくれたのは、ハウスメーカーのA社だ。多くの人は知らない事実だが、不動産仲介会社と建築会社とでは土地の見方が異なる。 不動産仲介会社に比べて建築会社は、土地自体の形状よりも土地を立体的に見て、事業の可能性を重視する。 仲介の不動産会社は、売却後の土地がどう使われようが知ったことではない。だが、建築会社のゴールは建てて経営することだ。 3Dで土地を見て、建ぺい率や斜線の問題などを考慮する。土地がどのような形状をしていようが、事業が成立すれば彼らにとっては価値がある。 この視点の違いは、土地選びにおいて非常に重要な要素となる。地主が検討すべきは、土地の事業性である。 したがって、新規に物件を建てる際は、まず先に目当ての建築会社を決め、その会社から土地情報を得るほうが効率的だ。