「ベストセラー絵本」と「フェス」には意外な共通点があった。絵本『100かいだてのいえ』面白さの本質を探る
フェスの特徴はミュージシャンの出演者数です。さまざまなバンドがおおよそ1時間ごとに出てきて演奏します。そのうえ、会場には複数のステージがあり、同時進行で多種多様なアーティストが出演します。観客は見たいミュージシャンごとにステージを移動しながら、長時間にわたって音楽を楽しむのです。来場者数は10万人を超えるものもあります。 通常の音楽ライブではステージはひとつです。また、出演者もワンマンでしたらひとつのバンドしか出ませんし、複数のアーティストが出るとしても限られています。共演するミュージシャンもジャンルやファン層など、ある程度のつながりがあるものです。
フェスが違うのは、ファン層がまったく被っていないであろうアーティストが次々と出てくるところです。つまり、フェスとはバラバラなミュージシャンと、バラバラなファンが1カ所に集まるイベントといえます。 たとえば2022年のフジロックフェスティバルは、出演ミュージシャンが100組を超えています。ということは、100組のファン層が会場に集うことになります。その相乗効果が現れるのは動員数だけではありません。観客以外にも「文化」として認知される影響力を持つのです。
■ひとつの場所に集めることのインパクト フェスには2重のインパクトがあります。さまざまなアーティストが1カ所に集まるインパクトと、異なるファン層が1カ所に集まるインパクトです。これによって通常のライブイベントではなく、「フェス」という一大文化に発展しています。 フェスの起源は1969年に開催されたウッドストック・フェスティバルに遡ることができるでしょう。8月15日から17日の3日間にわたって行われ、ザ・フーやジミ・ヘンドリックス、スライ&ザ・ファミリー・ストーンなどのアーティストが出演しました。動員数はなんと40万人を超えたそうです。ロック音楽史上の歴史的なイベントとして記録に残っています。