途上国、資金額に不満 温室ガス削減は議論低調 COP29〔深層探訪〕
国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は、途上国の温暖化対策を支援する資金の規模に関する目標で合意した。ただ、成果文書を採択した後も、額が少ないとして途上国から不満が噴出する事態となった。また、産業革命前からの世界の気温上昇を1.5度に抑えるための温室効果ガス排出削減を巡る議論は低調で、気候変動対策の推進に課題を残した。 【写真特集】地球温暖化~キリマンジャロの雪が消える ◇採択後に「失望」表明 COP29は、先進国が年1000億ドル(約15兆円)を拠出している資金について、2025年以降の新たな目標を協議した。途上国は1兆ドル(約154兆円)規模への大幅な増額を要求。「資金が不足し、現実的な問題に苦しんでいる」(エジプト)といった訴えが出た。 先進国はこれに対し、公的資金の増額は「納税者に対する説明責任が出てくる」(浅尾慶一郎環境相)として、慎重に対応。また、欧州連合(EU)も「能力を持つすべての国々が行動する必要がある」と主張し、中国などを念頭に新興・途上国も資金を出すよう求め、溝は深まるばかりだった。 結局、来年のCOP30議長国であるブラジルなどが仲介。「少なくとも年3000億ドル(約46兆円)」とする妥協案で、各国が折り合った。しかし全体会合では、成果文書を採択した後も、途上国側から不満の声が相次いだ。インドの代表者は「各国の立場が尊重されず、非常に失望している」と強い調子で語った。 ◇35年目標、追随誘発せず COP29は資金のほか、温室ガス削減に向けた機運醸成もポイントだった。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、各国は来年2月までに35年までの削減目標を提出する必要がある。気温上昇を1.5度にとどめられるよう、各国が取り組み強化の方向で一致できるかが問われた。 しかし、ここ数年のCOPで大きな議論となった化石燃料からの脱却には、焦点が当たらなかった。石油・ガスの輸出に依存する議長国アゼルバイジャンの意向があったとの見方もある。35年目標に関しても、英国が温室ガス排出量を1990年比で81%削減する目標を発表。しかし、追随する動きを誘発するには至らなかった。 世界の気候変動対策を巡っては、米国のトランプ次期政権がパリ協定から再離脱する可能性が指摘されている。そんな中、日本は温室ガス削減などでリーダーシップを発揮する見せ場に乏しかった。むしろ、石炭火力発電所の新設に反対する有志連合がCOP29期間中に発足したものの、先進7カ国(G7)で参加を見送ったのは日米2カ国のみで、その点で目立つ結果となった。 COP30議長国ブラジルのシルバ環境・気候変動相は、パリ協定を離脱したトランプ前政権時に触れ「世界は協力を続けてきた」と楽観論を示す。しかし、言葉とは裏腹に世界の結束に対する不安を払拭し切れていない。(バクー時事)