なでしこジャパン、メンバー最終選考サバイバルの行方。「一番いい色のメダルを目指す」パリ五輪へ向けた現在地
守備の新チャレンジに苦戦するも2連勝
今回は、2試合ともにスタート時のフォーメーションは3-4-3だったが、守備時は4-4-2のような形を取った。具体的な形について、池田監督はこう明かしている。 「3枚のどちらかが上がった状態でプレッシャーをかけにいく。相手のシステムとの噛み合わせで、ウイングバックがどこにプレッシャーをかけるかを判断していくことにトライしました」 目的は、3バックと4バックの柔軟性を高めつつ、チームコンセプトの原点である「ボールを奪う」精度を高めることだ。 結果的に、2試合ともその守備が機能したとは言い難い展開となった。日本の守備に対してニュージーランドはGKも含めてテンポよくビルドアップし、耐える時間が続いた。その中でも、初戦は少ないチャンスを生かして前半終了間際に田中美南が流れから先制。後半開始早々には19歳の古賀塔子がコーナーキックの流れから代表初ゴールを決め、2-0で勝ち切った。 だが、2戦目の前半は球際でほとんど寄せることができず、守備が機能不全に陥っていることが明らかだった。先発メンバーは現状のベストに近い構成と考えられただけに、その停滞はなおさら深刻に思えた。前半22分に、フリーキックの流れから失点。日本の強みであるはずの右サイドをスムーズに突破されたことも衝撃的だった。 結果的に、ハーフタイムの指揮官の3枚替えが的中し、後半は浜野まいかが2得点、中盤から1トップにポジションを変えた藤野あおばが3点目。終盤には千葉玲海菜が決めて、4-1と逆転で快勝している。 だが、相手が強豪国ならそうはいかない。池田監督は試合後、語気を強めた。 「前半はセカンドボールへの反応も遅かったし、動き出しの量や質、タイミングも含めて(力を出せず)、ノッキングして、テンポも出なかった。ああいう前半の戦い方はなでしこジャパンのサッカーではありませんでした」
「形にとらわれすぎた」2試合目の前半。ピッチで何が起きていたのか?
前半、ピッチ上で何が起きていたのか? ボランチの長谷川唯はこう振り返る。 「球際にいける位置や、セカンドボールがこぼれるポジションにいられなくて、やり方(システム)がはまってないな、という感覚でした。『この形で守ろう』という守備の形にとらわれすぎていた部分もあって、ウイングバックが上がるタイミングがずれた時に、それでもいこうとしてしまい、縦を狙われて後ろはスライドしきれなかった。もう少し柔軟に対応できるように構えておかないと難しいと思いました」 本来なら、わずか2試合で新たなオプションをものにするのは無理な話だ。だが、今年に入ってメンバーをある程度固定した中で積み上げてきたからこそ、修正を見越してリスクを冒せた部分はあるだろう。もちろん、ニュージーランドとの力の差も考慮したはずだ。 池田監督は2試合を終えて「守備の新しいオプションを増やせたこと、勝負事でしっかりと勝ち切ったこと」を収穫に挙げ、長谷川は「本大会で今回の4-4-2の形がはまりやすい(相手)なら状況に応じて変えられるように、形は作れたと思います」と手応えを口にした。