加齢黄斑変性―年を取ったら、黄斑はおかしくなる?【100歳まで見える目】
◇サプリメント、禁煙が有効
加齢黄斑変性は日本では失明原因の4位、欧米では1位です。欧米では日本よりもさらに重要な疾患であり、これに対し、予防できないかが数多く検討されてきました。信頼度の高い臨床研究により、加齢黄斑変性の発症が有意に減少することが示され、日本の新生血管型加齢黄斑変性ガイドラインでも、中期以後の方にはサプリメントの摂取が推奨されています。 このサプリメントには、ルテイン・ゼアキサンチンというカロテノイドとビタミンC.E.、亜鉛と銅が含まれています。カロテノイドは植物が光合成を行うときに生じる酸化ストレスから身を守るために作られる物質であり、動物は体内で合成することができません。酸化ストレスというのは生体にかかる負荷に関わる概念であり、発がんや動脈硬化等の加齢が関係する疾患での報告が非常に多数に上ります。といっても、サプリメント代として月に数千円はかかる負担もありますので、まず食事でいわゆる色のついた野菜を食べることをお勧めします。 喫煙は加齢黄斑変性のリスクを明確に上昇させます。多くの疫学調査で2~3倍の危険上昇が証明され、国によっては、たばこの箱に「喫煙は失明を引き起こします」と書いてあるとのことです。 有名人であれば和田アキ子さんは両眼に加齢黄斑変性を発症し、抗VEGF薬による治療を何度も受けているそうです。彼女もヘビースモーカーであり、肺気腫にもなっているとのこと。健康増進法では本人以外の受動喫煙も防止するように法改正されていますし、喫煙は量の多寡を問わず、はっきりと人体に対する毒性があることを認識していただきたいです。
◇病気への正しい知識を持って
加齢黄斑変性は、昔は座して死(=失明)を待つ病気でした。今は抗VEGF薬があり、予防概念としてサプリメントや禁煙があります。私の父はヘビースモーカーで、「太く短く生きるんだ」とうそぶいていました。しかし、日本は超高齢化時代に入っており、寿命より先に目が見えなくなることも考えられます。中国春秋時代における哲学者である老子は、しっかり見えることは元気で活力がある状態としていました。皆さんには正しい知識を持ち、健康でより良い一生を送っていただけたらと思います。(了)
岩見久司(いわみ・ひさし) 大阪市大医学部卒、眼科専門医・レーザー専門医。 大阪市大眼科医局入局後、広く深くをモットーに多方面に渡る研さんを積む。ドイツ・リューベック大学付属医用光学研究所への留学や兵庫医大眼科医局を経て、18年にいわみ眼科を開院。老子の長生久視(長生きして、久しく目が見えている状態)が来る時代を願い、22年に医療法人社団久視会に組織を変更した。現在は多忙な診療を行う傍ら、兵庫医大病院で非常勤講師として学生や若手医師に対して教鞭をとる。