映画「私にふさわしいホテル」主演・のんさん×原作・柚木麻子さん対談 文学界をのし上がれ!ヘンテコ大作戦
悪い役を待ち望んでいた
――のんさんは、加代子として映画で大暴れしていましたね? のん ふふふ。素晴らしい役でした! 山の上ホテルにも通いたいくらいですし、不遇な状況に置かれてもへこまずに立ち向かっていく加代子が面白くて、カッコ良くて。私がこれまでやってきた役の中で、一番性格が悪いと思いますが(笑)、そこがまた楽しかったです。 ――加代子とのんさんの共通点はありますか? のん 私は悪い役をずっとやりたくて待ち望んでいたので、お話をいただいた時は本当に嬉しくて、「頑張ろう!」という気持ちでいっぱいでしたね。加代子と共通するところは、何があってもへこたれないところや、仕返ししたいと思った時に、ヘンテコな作戦になるところでしょうか。 ――のんさんも仕返しすることがあるんですね? のん 仕返し癖があるかもしれないなと(笑)。今回演じてみて、今後は加代子のように、ド派手にやりたいなあと思いました。
「生きる力が強そう」
――ド派手宣言ですね(笑)。映画の撮影前にはおふたりの面識はなかったとのことで、もし会えていたら、のんさんは柚木さんに聞きたいことがあったそうですが……。 のん この映画を手がけた堤幸彦監督のはからいで、現代の設定を1980年代にして撮影したんですが、この時代設定はいかがでしたか? 柚木 設定を変えると聞いた時、何の抵抗もありませんでした。執筆するパソコンが万年筆になるような違いだけなのと、80年代のほうがさらに加代子がのびのびできる気がして。むしろ映画化するにあたって、加代子がちょっといい人になったらどうしようとは考えましたが、のんさんが主演ならそれでもいいかと。でも、原作通り、性格の悪い加代子で面白かったです。 のん その悪さ度合いは、撮影前にもしお会いできていたら、おうかがいしたかったなと思っていました。 柚木 加代子はもうめちゃくちゃ性格が悪いですよ(笑)。でも、のんさんの加代子を見て、目がギラギラしているところ、よく食べるところ、人の家でもどんどんお酒を飲んでしまうところも、すべて生きる力が強そうですごくいいなと思いました。 のん よかったです! ――柚木さんは、映画のあるシーンにご出演されていましたね? 柚木 出ています。もともと日本の実写映画が大好きで、文化人が映画に出ているのを見つけるのも好きで。その文化人自身が出演したことを忘れていたとしても、私は一度見たら覚えているので、「あの時、こういう演技をしていましたよね?」と、ご本人に聞くのも好きなんです(笑)。本業ではないからといって、照れた感じで出るのがいやなので、全力の演技をしています。 ――劇中で加代子が書店員さんの機嫌を必死にとる場面もありますが、柚木さんは「デビューしたばかりの頃の自分を重ねて何度も泣きそうになりました」とコメントしていました。ご自身の思い出が、映画化されてさらに蘇ることもありましたか? 柚木 加代子のように、今も1人で書店回りをしますよ。書店のバックヤードには万引き犯の啓発ポスターが貼ってあるので、新人の頃は「この犯人を捕まえたらポップを書いてくれるかな?」と思ったことがあります(笑)。妄想ですね。そういった経験もこの作品に役立っています。