「男性部下の『くん付け』はパワハラではないか」と社内の相談窓口に通報された女性上司の末路
■呼び方ひとつでトラブルに発展する可能性 「○○、ちょっといいか?」と上司に呼ばれる。オフィスでのそんな光景は、少し前までは当たり前のように見かけました。しかし、ここ10年ほどの間で、上司が部下を「呼び捨て」にすることは不適切だという認識が急速に広がっています。 【図表をみる】若手部下の呼び方は「さん付け」が約8割 ひとつのきっかけになったのは、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」でした。学校でのいじめを防ぐために、17年には文部科学省が「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を策定。あだ名や呼び名に配慮するよう求めました。 また、ジェンダーへの意識も高まり、男女を問わず「さん付け」にしようという流れが広がりました。これが「パワハラ」回避の風潮とともに、企業にも普及したと考えられます。リクルートワークス研究所が23年に行った課長級管理職などを対象にした調査でも、部下の呼び方について「さん付け」が79.3%と圧倒的多数でした。 では、部下を呼び捨てにすると即座に「パワハラ」になるのかといえば、答えはノーです。「おまえ・あいつ・こいつ」も、それだけではパワハラにはなりません。日常的に強い口調で叱責するなど、指導の範囲を逸脱していなければパワハラではないのです。 ただし、部下が嫌がっているのに呼び捨てを続ける、呼び捨てに精神的苦痛を感じるほどの罵声が伴うといった場合は、パワハラにあたる可能性も出てきます。 次の場合はどうでしょう。ある職場で、実際にあった例です。 ある女性上司が、男性部下を「くん付け」で呼んでいました。お互いに何の違和感も抱いていませんでしたが、その光景を見た周囲の人間が「男性部下の『くん付け』はパワハラではないか」と社内の相談窓口に通告したのです。会社から聞き取りを受けた女性上司は、そのような声が上がったことに対し、「私をパワハラ上司扱いするのか」と憤慨。別のトラブルへと発展してしまいました。