■まずは「さん付け」で相手との信頼関係をつくる 　呼び方は人間関係に直結します。「自分は苗字で呼び捨てにされるのに、あの人はどうして下の名前で親しげに呼ばれるんだろう」と、嫉妬する人がいないとも限りません。そう考えると、自分のためにもチームのためにも、上司は部下をおしなべて「さん付け」で呼んだほうが無難だと言えるでしょう。 　こんな状況はどうでしょう。チームメンバーがある社員のことをニックネームで呼んでいて、そんな関係性をいいなと思ったとします。そういうときは、「自分もそう呼んでもいいか」と直接聞いてみてもいいでしょう。ただ、同僚であればそれでいいのですが、自分が上司の場合、部下は「イヤです」と言いにくいもの。やはり「さん付け」するのがベターです。 　威圧的な呼びかけは別として、上司から部下に向けられる「呼び捨て」には、信頼や親しみ、責任といった意味合いが込められていることもあります。若手社員の中には、自ら「呼び捨てにしてほしい」「ちゃん付けで呼んでほしい」と思っている人がいるのも事実。呼び捨てを悪者にする風潮には、少し寂しさも感じます。 　ただ、先の女性上司のように、名前の呼び方ひとつで「パワハラ上司」のレッテルを貼られてしまったら、社内での評価に響くなど「損害」を受けるのは自分です。そう考えると、意識をアップデートしたほうが賢明でしょう。 　人間関係には、相手を敬う「マナー」が必要不可欠。部下だから呼び捨てにする、昇進した途端に部下を「くん付け」するといったあからさまな態度は避け、誰に対しても敬意をもって接することが基本です。 　「さん付け」以外の呼び方を考えるのは、相手との信頼関係が築けてからでも遅くはありません。 　※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 山藤 祐子（ざんとう・ゆうこ） ハラスメント対策専門家 ハラスメント研修専門講師として年間150日以上登壇、年平均の受講者は1万人以上。研修を実施した企業や自治体は400社以上にのぼり、管理職研修の累計参加者数は2万人超。 ----------