「生活道路まで…」住民危機感 北アルプス上高地観光、マイカー利用倍増であふれる車が問題に 渋滞20キロや路上駐車で下山できない人も…自治体は対応模索
「オーバーツーリズム」状態
2024年の入り込み数が、ここ15年で最多となった長野県の北アルプス上高地。観光関係者らがにぎわいを歓迎する一方、バスに乗り換える沢渡では、外国人を含むマイカー利用者の増加に伴って駐車場が満車となり、渋滞や路上駐車などの問題が顕在化した。魅力ある観光地として来訪者の満足度をどう高めるか。オーバーツーリズムとも言える状況に、松本市などの関係機関は対応を模索している。 【グラフ】上高地の入り込み数と松本市営沢渡駐車場の利用台数。新型コロナ前と比べて倍増している
約4割が外国人観光客
閉山式が行われた15日、河童橋周辺には大勢の外国人観光客らが訪れ、雄大な穂高連峰をカメラに収めていた。 上高地インフォメーションセンターを運営する一般財団法人自然公園財団上高地支部の加藤銀次郎所長は、窓口で対応した人数や団体バスの数などから見込む今年の外国人観光客は全体の4割ほどで、50万人を超えると推測する。外国人観光客はSNS(交流サイト)の発信を見て訪れる人が多いという。
深刻な路上駐車も
一方で、夏休みや連休を中心に渋滞が発生した。紅葉が始まった3連休中の10月13日には、沢渡周辺で路上駐車が相次いだ。沢渡にある1239台の市営駐車場は午前5時ごろ、臨時も含め満車に。午前9~11時ごろに駐車場に止められない車が国道の両脇に路上駐車した。民間795台の駐車場でも満車になったとみられる。
渋滞20キロ、下山できない事態に
市営駐車場を管理する一般財団法人ピアーズさわんどの河辺大樹統括主任は、「路上駐車でバスのすれ違いが難しくなり、さらに渋滞が起きて上高地から下山できなくなる悪循環が生まれた」と振り返る。夕方には、新島々駅から約20キロ離れた沢渡バスターミナルまで渋滞が続いた。道路工事で片側通行の箇所があったことも拍車をかけた。
生活道路も渋滞、住民に影響も
市街地から沢渡に向かう国道上には抜け道がなく、松本市の乗鞍高原や奈川、岐阜県高山市に向かう車も通る。同法人の斉藤敬一代表理事は、「生活道路もすべて渋滞し、住民にも関わる」と危機感を示した。
要因の一つがマイカー利用倍増
駐車場の満車は、マイカー利用の増加が一因だ。市営沢渡駐車場の利用台数は14年、入り込み数127万7800人に対して3万5509台だったが、今年は143万人に対し、8万9121台(10月末時点)と2倍以上に増加した。