明石家さんまさん母校のまち 住民の力でスーパー整備計画始動
食材の販売店が少ない東大寺近くの鼓阪(つざか)小学校区(奈良市雑司町)で26日、地元住民が“手作り”でスーパーを開くプロジェクトを始動した。10年以上前に閉業したコンビニエンスストア跡を再生し、総菜を中心に高齢者らが求める食材をそろえる店を目指す。地域活性化に向けた取り組みの一環で、将来的に企業型保育施設や外国人観光客向けのサービスの整備なども構想に描く。 以前は校区内にスーパーやコンビニ店などが数店あったが、その後、唯一となっていたスーパーが廃業。買い物が不便になった高齢者が増え「総菜をすぐ買いに行ける店がほしい」などの声を聞く機会が増えたという。校区内では少子高齢化も進んでおり、鼓阪小の児童数が減ることなどを懸念した同小保護者と地域住民が「一日も早く地域活性化に取り組む必要がある」と、5月にチーム「GOGO NEW TSUZAKA」(代表・関亜可里さん=44)を発足し、活動に踏み切った。 「床が抜けるかもしれないから気をつけて」「重たい棚だから協力して持とう」。活動初日の26日は地域の小学生から80代までの15人が参加した。子どもたちは店内に数多く残る古い棚や備品の廃棄作業に集中し、大人は店舗裏にある解体予定の木造倉庫を中心に、傷んでいる床材や屋根瓦の撤去などに奮闘。伸びて隣地にはみ出しそうな木も伐採した。 メンバーの現役大工職人は解体や改装などの専門技術を要する作業で活躍。関さんは「人件費を抑えるため、開店のために自分たちでできることはすべて有志メンバーでやる」と意気込む。 1~3月に不要物撤去や改装工事、陳列棚などの配置を行い、4月の開業を目指す。敷地面積は約200平方メートルで、小規模なスーパーになるが、天井をはがして吹き抜けにするなど開放的で入りやすい空間に仕上げる。家主と賃貸契約を結んで運営する。 民間のスーパーやコンビニ店がかつて撤退した地区でもあるため、赤字を避けながら運営を続けていける保証はない。このため、店の跡地を活用し、開店のための改装費用を極限まで抑えるほか、高齢者の需要が特に大きい総菜などの品ぞろえを強化し、安定した顧客獲得を目指す。当面は地元のカフェなどの経営者でもある関さんがスーパーを運営する知人からノウハウを学びながら仮運営し、軌道に乗った段階で運営希望者に引き継ぐ予定だ。 関さんは「建物を整備する段階まではボランティアに協力してもらうが、その後は従業員を雇用した上で事業として成り立たせたい。地域の住民が働ける場所として根付かせることが重要」と強調する。 チームは長期的に、増える空き家を活用した地域活性化を目指す。今回はその第1弾。今後は地域食堂や企業型保育施設など地域コミュニティー向けのサービスを計画。海外からの来訪者に向けた商店やコンドミニアムなどの整備構想も描いている。 鼓阪小は東大寺の境内のすぐそばにあるだけでなく、タレントの明石家さんまさんの母校としても知られる伝統校。だが、児童数の減少が続き、市が近くにある佐保小(法蓮町)との統廃合計画を進めている。 このため、チームは留学生とその家族の居住を促して鼓阪小の児童増加につなげる展開も視野に入れている。関さんは「歴史のあるこの地域ならではの教育ができる魅力を国内外に周知できるよう努めたい。少子化対策や地域活性化の成果を出して、市が進める両小の統廃合計画の見直しにつなげたい」と意欲をみせる。 チームは一緒に活動するメンバーを募集中。問い合わせは関さん(080・1447・8542)へ。【山口起儀】