センバツ高校野球 専大松戸、一歩及ばず 強豪相手に互角の戦い /千葉
初めて挑んだセンバツの舞台で最後まで諦めることなく戦ったナインに、アルプススタンドから万雷の拍手が送られた。第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第6日の25日、専大松戸は第1試合で中京大中京(愛知)に0―2で惜敗した。先発の深沢を中心に中京大中京の強力打線を3安打に抑え、大会屈指の右腕・畔柳(くろやなぎ)を果敢に攻め続けたが甲子園初勝利を手にすることはできなかった。【長沼辰哉、大坪菜々美、長屋美乃里、橋本陵汰】 スクールカラーの緑色に染まった三塁側アルプススタンドに、在校生と今春の卒業生合わせて約400人が駆けつけた。試合前から降り出した雨の中、生徒らは吹奏楽部が事前収録した曲に合わせて、2本のプラスチック製のスティックを振ってエールを送った。 初回から専大松戸ナインは中京大中京の先発、畔柳の速球を積極的に狙っていった。一回表1死で大森が初球を振り抜き中前打で出塁すると、アルプスに大きな拍手が湧き起こった。父親の二三雄さん(45)は「幼稚園のころから何度も家族でセンバツの観戦に来ていた。その甲子園に息子の応援で来ることができて感動した」と声を弾ませた。二回表2死、昨秋は打撃が不調だった加藤の初打席。打球は左中間を破る三塁打となり、塁上でガッツポーズを決めた。 先発の深沢は、緩急をつけてコースを丁寧に突き、一、三、五回は3者凡退に抑える好投。試合後、持丸監督は「100点だった」と手放しで評価した。 試合が動いたのは七回裏2死二塁。レフト方向に飛んだ中京大中京の櫛田の打球を、定位置より前で守備についていた左翼手の吉岡が飛びついたが、打球はグラブの10センチ先で弾み、抜けた。ランニング本塁打となり2点を奪われた直後、スタンドから大きなため息が漏れた。 追加点を許さず迎えた九回表。コーチ陣が「バッティングにパワーがある」と評価する横山の代打が告げられた。力強い打球は右前打となり、打撃好調の加藤に希望をつなげた。母親の陽子さん(50)は「いつも夜遅くまで自主練習しており、ご飯を作って帰りを待っていた。がんばってほしい」と涙を浮かべながら我が子を見つめた。2ボール2ストライクと追い込まれると、終盤になっても球威が落ちない畔柳の速球に手が出ず、専大松戸の戦いは幕を閉じた。 試合後、アルプスの前に選手らが整列し、頰をぬらしながら「ありがとうございました」と一礼。最後まで勝利を信じて応援を続けた生徒らから惜しみない拍手が送られた。試合後、持丸監督は「攻めたプレーの結果だった。試合前に積極的にやろうと話していたので良かった」と選手らをねぎらった。 ◇目で笑顔を表現 ○…チアリーディング部の17人はアルプスから息の合ったエールを送った。応援できることが決まったのは大会直前だったが、1月末に出場が決まってから授業前と昼休みに毎日練習を続けた。部長の上水流舞さん=写真・手前=は「応援で勇気を与えたい。大きな舞台に連れてきてくれた野球部にありがとうと言いたい」と話した。声を出して応援できないが「マスクを着けていても笑顔と分かるよう目で表情を表した」といい、精いっぱいのパフォーマンスで盛り上げた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「甲子園で勝つ」課題得る 専大松戸 石井詠己主将(3年) 「チームで高めの球には手を出さないよう決めていたが、手が出てしまった」。中京大中京のエース、畔柳を攻略するために練り上げた作戦をうまく実行できず、チームを昨秋からまとめてきた主将は悔しさを絞り出すように話した。 チームに三振の山を築くような投手や、本塁打を量産する打者もいない。それでも勝ち抜いてきたのは、全員でアウトを取り、得点につなげる組織力を磨いてきたからだった。 昨秋の県大会と関東大会で強豪にも競り勝ったが、細かな戦術などでチームが一つになれていないことに悩み「もっと団結して戦えるのでは」と感じた。すぐに解決策は見えなかったが、自身が練習に打ち込むことで、仲間が自然とついてくるようになり結束を高めて甲子園にやってきた。 しかし、この日の試合では高めの球にも手を出してしまい、12三振を奪われた。好機を得点につなげることもできなかった。試合後の取材に「攻略方法を早くつかめれば、1、2点は取ることができたと思う」と振り返った。甲子園で勝つための課題を得た主将は、夏に再び戻ってくることを誓ってグラウンドを後にした。【長沼辰哉】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 専大松戸 000000000=0 中京大中京 00000020×=2