まだ手に入れられる? イメージを異次元のランクにアップグレードした断トツのコラボ。
2024年秋冬のファッション界で最も話題をさらったのは、「ZARA(ザラ)」とデザイナーのステファノ・ピラーティがタッグを組んだメンズ&レディースのスペシャル コレクションではないでしょうか。(注)あくまで個人的な感想です。悪しからず……。 【画像】もっと写真を見る(6枚) もちろん、今季もさまざまなジャンルでビッグコラボはありましたが、お互いの持ち味が見事にマリアージュしてザラのイメージを異次元のランクにアップグレードしたこのコラボは、断トツ! ステファノ・ピラーティは、58歳(1965年12月ミラノ生まれ)でデザイナーとしては円熟期。経歴のなかで有名なものは、2004年から約8年間イヴ・サンローランのクリエイティブディレクターとなり、その後はエルメネジルド ゼニア(現 ゼニア)でヘッドデザイナーを務めたこと。(注)現在は、自身が立ち上げたランダム・アイデンティティーズを率いています。 この衝撃的なスペシャル コレクションが10月3日に発売されるや世界中で争奪戦が起こり、その日のうちに完売するものが続出。これは、数日前からキャンペーンビジュアルなどの情報がSNSなどで公開されて拡散されていたから。なんとメンズのモデルはステファノ・ピラーティ自身、レディースのモデルはジゼル・ブンチェン、撮影はスティーブン・マイゼルというメゾンブランド並みの顔ぶれで作られていたことが、希少なコレクションをヒートアップさせました。 私は発売当日の夜に公式サイトとにらめっこしながら、まだ手に入るものはないかとチェックしてみたところ、思わぬ掘り出し物を発見。サイズや素材感を確認したかったので、ザラ新宿で現物とご対面! そのアイテムがこれ。ザラのECサイトでは、ブレザーという表記ですが、明らかにコート。 リラックスフィットとECサイトに表記がありましたが、試着してみると同じコレクションのビッグシルエットのものに比べるとかなり細身。とは言えトラッド系のコートと比べれば明らかにゆったり感があり、独特のAライン気味のシルエットはトレンド感満載。 色はカーボン(黒)で、コットン混紡のテクニカル素材。モード感を感じるマットな表情で、若干ストレッチが利いています。これなら、秋&春はシャツやパーカの上に、冬になればスーツやセーターの上にはおるコーディネートも可能。最初は、この時期にウール入ってないの?と思いましたが、昨今の温暖化を考えると、この素材は長い期間使えるのでベストな選択。 それとこのコートに関してはSサイズがあるのがポイント。ほかのメンズのコートやジャケットには日本人向きの小さめサイズが少ないので、コートのサイズ選びで悩んでいた方には最適では。ちなみに、身長170cm、体重70kgの私が試着したところ、ジャストサイズならS、ややオーバーサイズ気味に着たいならMといった感じでした。 このコートのラペルは、小ぶりのピークドラペル。フレンチスタイルのフィッシュマウスぽい仕上がりになっています。 アップで見るとわかるのですが、表面は独特の細かな凹凸がある織りになっています。なんとなくビンテージのフォーマルコートのような風合い。これなら、ビジネスシーンでも使えますね。 ステファノ・ピラーティは、老舗メンズブランドのエルメネジルド ゼニアで仕事をしていたことからわかるように、クラシックなメンズの縫製やデザインにも精通しています。それが感じられるのがコートの肩まわり。バックスタイルからは、エレガントでありながらもモード感を感じさせるオーラが出ています。 この雰囲気を作っている要因のひとつが、肩のディテール(縫製パターン)。肩の縫い目から前がジャケットやコートに使われるセットインスリーブで、後ろがラグランスリーブになったスプリットラグランスリーブという凝ったつくりを採用。こうすることで、前からはクールにスッキリ見せ、後ろからは肩の奇麗な落ち感を出しつつも腕の動きやすさもキープするという離れ業をやってのけています。 こだわり満載のこのコートは、モード系の人ならずトラッド系の人にも刺さる最強コラボ傑作と言ってもいいのではないでしょうか! Photograph & Text:Yoichi Onishi 大西陽一 数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
朝日新聞社