かつてのスマホ王者、HTCは「どこでも手軽にVR空間を作り出す」、アップルとは対照的な戦略でシェア拡大を狙う
■急成長のVR市場で横ばいのHTC IT専門調査会社IDC Japanの2023年国内AR/VRヘッドセット市場調査によると、VR市場全体は大きく成長を続けている。しかし、この成長の中でHTCのVRデバイスの出荷台数は横ばいの状態が続いている。市場シェアで見ると、Metaやソニーが上位を占める中、HTCはトップ5に入るものの、その差は大きい。 IDC Japanのアナリスト井辺将史氏は、HTCの現状をこう述べる。
「HTCは今の国内のトップ企業であるMetaやPicoなどより古くから日本市場で活躍している企業で、この市場においては老舗と言えます。国内ではコマーシャル市場の中で一定のプレゼンスがあり、地道にユースケースの発掘や新規開拓を行っています」 「一方でHTCの出荷数はここ数年は数千~1万台程度です。近年、Meta、Xreal、PSVR、Picoなどコンシューマー向けのヘッドセットがトップシェアを占めるようになり、相対的にシェアが下がっています。出荷台数自体もコンシューマー向けではMetaやPicoなどと比べた場合、販路やマーケティング、アプリケーションといった面で劣ってしまうので減少傾向にあります」(井辺氏)
カントリーヘッドの小山氏は現状について「市場が広がっている中で、HTCはもともとのユーザーベースがあり、販売数はそれほど変わっていない。新しい製品が出るとコンスタントに売れていく」と述べ、コアなファン層は維持できていると説明する。 ■他社ヘッドセットにトラッカー提供 HTC NIPPONは、VRヘッドセット市場でのシェア低下という課題に直面しながらも、周辺機器戦略で活路を見いだしている。 VRヘッドセットには“トラッカー”という周辺機器がある。指先や足元などの全身の動きを検出するデバイスだ。HTCはこのトラッカーを、Meta Questのような他社製のデバイスでも利用できるようにしている。小山氏は「VRヘッドセット界のAnkerを目指している」とスマホ周辺機器大手になぞらえて語る。