センバツ2024 創志学園を支える力/下 「スポーツ岡山」店主 金田健治さん(70) /岡山
◇仕事抜きでも役に立つ プロ野球で3度の3冠王に輝き、中日の監督も務めた落合博満さんと親交があり、岡山市中心部の西川緑道公園沿いで営む野球用品店「スポーツ岡山」(同市北区駅前町2)の店内には、数々の名選手が使用したバットなどが所狭しと並ぶ。一角には、過去に甲子園を沸かせてプロに進んだ創志学園OBの写真も飾られている。現役部員が訪れることもあり、「この前も『練習が早く終わった』と言って何人か来てくれたよ」と目を細める。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 野球部とは2010年の創部時からの付き合い。「公式戦は全て見てきた」と胸を張る。関わりは用具の納入だけにとどまらず、大長秀行部長(36)は「創部当時は自分も含めて岡山出身者がおらず、県内の事情が分からなかった。さまざまなことを教えてもらい、力になっていただいた」と存在の大きさを語る。 同県新見市出身。子どものころから野球好きで、岡山日大高(現倉敷高)や亜細亜大でプレーしたが、大学は周囲のレベルの高さについていけず数カ月で中退し、一度は野球と縁が切れた。それでも、「野球とつながりを持てるなら」と大阪のスポーツ用品問屋に就職し、1977年に独立して現在の店をオープン。79年には県内初の硬式の少年野球チーム「岡山リトルリーグ」を結成して指導者の道を歩み始め、翌年には中学硬式野球の「岡山リトルシニア」も設立し、元阪神の真鍋勝已さんや、現ロッテ2軍監督のサブロー(大村三郎)さんらを輩出した。 創志学園とは、以前から面識があった初代の長沢宏行前監督(70)との縁で関わりが始まった。創部当時はリトルシニアのグラウンドを貸し出したり、練習試合の相手を探したりと人脈を駆使して奔走した。「県外から来た指導者は不安があると思う。仕事抜きでも役に立ちたい」。その姿勢は今も変わらない。2022年8月に就任した門馬敬治監督(54)にも、県内の野球事情などを惜しみなく伝えてきた。 門馬監督の就任が決まった際、県内の野球関係者の中には警戒感を口にする人が少なくなかったという。「何か新しいことをしようとすると、悪気なく拒否反応を示すのが岡山ですから」。だが、あいさつ回りなどで県内をくまなく歩く姿や練習に対する真摯(しんし)な姿勢が広く知られるようになり、「周囲の目も変わってきている。野球が好きで夢を持って岡山に来たんだから応援しなきゃ」と力を込める。 7年ぶりのセンバツに向け、「一つでも多く勝ってくれれば地元も盛り上がる。そうすれば、岡山の野球もいい方に変わっていくと思う」。新監督を迎えて初めての甲子園。その戦いぶりが、岡山に新風を吹き込むことを期待している。【平本泰章】