人気声優・小野賢章が語る「声優業」のシビアな日常「“終わったな”と思ってしまうこともある」
「お兄さん、私とパーティーを組みませんか?」――。アニメ『パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき』(テレビ朝日系ほか )が現在、オンエア中だ。過去のパーティーで無能扱いされ、追放された治癒師ラウストが、過去に因縁があった少女ナルセーナに背中を押されて冒険に踏み出す。これまでの逆境から這い上がり、自らの地位を確立していく姿が丁寧に描かれている。 ■【画像】絶望的…小野賢章さん演じる主人公がパーティーから追放された瞬間■ 本作で主人公ラウストを演じているのが小野賢章さんだ。幼いころから役者として活動し、声優としても数多くの名作に登場している彼に、ラウストに共感するところをたずねた。【第1回/全4回】
主人公・ラウストの第一印象
――小野さんは『パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき』でラウスト役を演じられていますが、この人物にどんな印象を抱かれていたのでしょうか。 小野 僕が演じているラウストは、ヒール(初期の回復魔法)しか使えない治癒師で、まわりの冒険者たちに対して劣等感を感じている主人公です。でも、夢を諦めきれない。パーティーの一員になってダンジョンで活躍するという、やりたいことに自分の実力が追い付いていないことへの葛藤があるんです。とくに序盤はその葛藤を描くシーンが多かったので、そこを意識しながら演じていましたね。 ――ラウストを演じるにあたり、実力が発揮できない葛藤の部分を大事にされていったんですね。 小野 でも、ラウストはポジティブなんですよ。パーティーから一度追放になったとしても、冒険をあきらめるわけでもないし、新しいパーティーを探してもう一回やろうとする。まわりの人から「パーティーをクビになった人」というレッテルを貼られて、「あいつはやっぱり向いていないんだ」という厳しい目で見られていたとしても、彼は気にしていない。そういう一面を意識した役作りをしています。
小野賢章さんが主人公・ラウストに共感する部分は
――ラウストのポジティブな一面は小野さんのお芝居によって明るく表現されていて、とても魅力的な人物として表現されていると思います。小野さんが、ラウストに共感を抱く部分はどんなところですか。 小野 ラウストは治癒師としての能力は低いということを自分で把握していて、その代わりにフィジカルを鍛えようと訓練したりする。自分のことや、自分が置かれている状況をしっかりと俯瞰で見ているんですよね。そういうところは共感というか、尊敬できるなと思います。僕も、いつもなるべく自分自身を俯瞰で見ようと思っていて、自分のお芝居であるとか、普段の生活で反省ばかりしています。 あのときこうすればよかったなとか、現在の状況を変えるためにどうしたらいいかな、とか……いろいろと考えてしまうんです。ラウストの場合は、そういう反省点を克服するために行動して強くなっているんですよね。たとえば、パーティーのみんなのために活躍するには、自分のどの能力を伸ばしていけばいいかを常に考えながら行動している。特訓をしているところを見ると感心するし、それが自分もできたらいいなって思います。 ――小野さんの向上心を刺激する存在が、ラウストなんですね。 小野 でも、なかなか変わるのって難しいじゃないですか。やっぱり自分にとって居心地が良いから、そういうかたちになっていくわけなので。人格形成もふくめて変えることって相当ストレスだと思うんですよね。なかなか、自分を変えるのは難しいです。 ――自分を変えることが難しいけれど、よりよくあるためには変えなくちゃいけない。 小野 常に何かに悩んではいますね(笑)。やっぱりいろいろな役者さんがいて、いろいろな表現方法があるので、自分ができない表現方法をやっている役者さんと共演すると、すごく悩みますね。隣の芝生は青いというか、自分にないものを持っている人ってよく見えるじゃないですか。それが毎日起きているんです。