プレミアリーグのニューカッスルが来日 サッカーに熱狂するイングランド北部クラブの長い歴史と背景
【炭鉱労働者は熱狂的なサポーター】 僕は、25年ほど前にニューカッスルとサンダーランドの取材に行ったことがある。 サンダーランドでは、昔、ビジターチームが必ず宿泊したという北海に面した木造の古いホテルに宿泊したが、冬場だったので北海から吹きつける冷たい強風に閉口したのもいい思い出になっている。 ところで、ニューカッスルの正式な都市名は「ニューカッスル・アポン・タイン」という。 「アポン川のニューカッスル」という意味だ。「ニューカッスル」とは「新しい城」という意味で、きわめてありふれた地名なので同名の都市がいくつもあるのだ。実際、イングランドにも「ニューカッスル・アンダー・ライム」がある。こちらは、「ライム川のニューカッスル」だ。つまり、川の名前で区別しているのだ。 オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州にあるニューカッスルは、2015年アジアカップの会場にもなった都市だが、ここもハンター川の河口にある石炭積み出し港だった。 ちなみに、「新しい城」という意味の地名は英語圏以外にも世界中に存在する。そこで、世界の同名の都市が集まった「ニューカッスル・アライアンス」という組織があり、日本からは愛知県の新城(しんしろ)市が加盟しているそうだ。 さて、イングランド北東部のニューカッスルの産業を支えた炭鉱は、タイン川の上流にあった。そこで産出された石炭は鉄道で河口のニューカッスルまで運ばれ、ここから各地に搬出された。そして、1893年にこの町に作られたフットボールクラブ、ニューカッスル・ユナイテッドFCを最も熱狂的にサポートしたのは上流の炭鉱労働者たちだったのだ。 同様に、ウィア川上流の炭鉱の労働者たちは、やはり河口の港町サンダーランドのクラブ、サンダーランドAFC(1879年創設)をサポートした。ニューカッスルでも、サンダーランドでも、ビッグゲームがある日には石炭積み出し用の鉄道が特別列車を走らせて、炭鉱労働者をスタジアムまで運んだそうだ。 炭鉱労働者というのは、どこの国でも最も熱狂的なサポーターとなっている。 有名なのはドイツのシャルケ04。ルール炭鉱の労働者の熱い応援が有名だ。その他、フランスのサンテティエンヌやベルギーのシャルルロワ、ウクライナのシャフタール・ドネツクなど、熱狂的なサポートを受ける炭鉱町のクラブは各国に存在する。