上司のいない未来におけるコーチの役割 【原文】Coaching Mastery – The Boss-less Future
コーチの世界観、マインドセット、コーチング哲学がクライアントに影響を与える
再創造すること、再考すること、再構築すること... あるいは「自分のコーチとしての仕事の本質を思い出そう」と言ってもよいかもしれない。プロコーチとしてのあなたの熟達度は、クライアントや顧客企業と向き合って対話する瞬間に体現されるだけでなく、コーチ自らの世界観、マインドセット、コーチング哲学にも現れる。上述の3つの言葉から、あなたは何を想起するだろうか。 あなたがコーチとしてサービスを提供するクライアントには、子育て中の人もいれば、企業幹部もおり、その生活は多岐にわたる。クライアントにとって差別化をもたらす要因はあなたである。あなたが表現し、交流し、存在感を発揮し、個人やチームのパートナーとして協働するときに、どのように自分自身を示し、何を体現するのか、その選択がクライアントにとって重要となる。世界観には、自身のアイデンティティ、すなわち自分の人生や文化的伝統、風土によって長い時間をかけて形成されたもの、またこれまでの人生で受けた哲学的、精神的影響が含まれる。マインドセットは、意識的なものかどうかにかかわらず、自らの行動を導く現時点での判断基準や態度、思想、信念などである。企業におけるブランドと同様、あなたのコーチング哲学は、あなたの存在によって、また自分自身、クライアント、同僚、同業者のコミュニティとの関わりを通じて表現されている。 最近ではいつ、上述の3つの言葉に注意を向け、何があなたを自分自身にしているのかを意識的に示したのか考えよう。クライアントが相手にするのはコーチという職業ではない。安心して話すことができ、相手を尊重し、勇気ある挑戦へ向けて背中を押してくれる存在であり、心に響く言葉でエンパワーする人物、クライアントが目指すものをともに信じることによって新たに生まれる可能性を実現する闘士としての人間を相手にしているのである。個々のクライアントとのパートナーシップを育みながら、本人だけでなく、そのマインドセットや行動の変化によって影響を受けるクライアントの周囲の人々とともにあなたは自身の仕事を構築していくのだ。 あなたが起業家であろうと、企業内でコーチングサービスを提供している社員であろうと、コーチであるあなたはこれまでもそうだったように上司を持たないリーダーだ。これは経済の動向や社会の影響によって変わることはない。 上記に引用したのはガートナー・グループの未来予測だが、自分ではどうすることもできない生活や仕事に関して、あなたやクライアントのマインドセットに大きく作用する外的影響を示唆している。アジャイルな働き方(30%)やハイブリッド型の職場(50%)が普及するなか、現在の組織では約3分の1のチームがマネージャーがいない状態で活動している。コーチングの相手はこの破壊的変化を日常ベースで経験している社員、上司、その家族かもしれないが、あなたを含めて誰もが「もうどうしたらよいか分からない」「こんなことには対処できない」と一度は思ったことがあるはずだ。 あなたに分かれば、クライアントにも分かる。疑念や不安を抱くと、分かっていることがその瞬間分からなくなる。あなたにもクライアントにも能力、機知、創造性があり、新しい考え方やアイディアを刺激する好奇心を働かせて人生の新たな関わり方を築く土台を作ることができる。