ヤマハ「Y-AMT」+MT-09 vs BMW「ASA」+R1300GSアドベンチャー【注目のクラッチレス機構を徹底比較・後編】
ASA:既存のマニュアルスポーツから自然に乗り換えが可能な、BMW流クラッチレス機構
【BMW・ASA】 試乗車:R1300GSアドベンチャーASA(価格:354万9000円※車体色によって異なる/車重:269kg) ■STDモデルとの価格差/重量差:9万7000円/2.5kg(※推定値) ■特徴 2024年にR1300GSアドベンチャーの一部仕様として採用されたクラッチレス機構がASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)。次年度以降はR1300GSにも採用される模様だが、同機構の特徴もヤマハのY-AMTと同様、シフトアクチュエーターとクラッチアクチュエーターを装備(ASAの場合はエンジンケースに内蔵)し、クラッチの自動制御、シフトの変速制御を実施。クラッチは手動での操作がないためレバーは非装備で、大型自動二輪AT限定免許で運転可能。 Y-AMTと異なるのは、変速操作を手ではなくシフトペダル操作のままとしたことで、通常の変速と同様のシフトパターンとなっている。マニュアルモード(Mシフトモード)とATモード(Dシフトモード)の切り替えは、左グリップにあるボタンのひと押しで簡単に切り替えが可能。 ■長所 Mシフトモードは「クラッチ操作のないクイックシフター付きのマニュアル変速」と言えるもので、発進と停止でも違和感のない自動クラッチ操作が確かめられる。変速も違和感がなく、ライディングモードごとに特性の変わるATのDシフトモードも、それぞれに加速・減速の特徴を持ちつつ、滑らかな変速を実現。Mシフトモード、Dシフトモードとも、停止時には1速へ戻る自動シフトダウン機能があるほか、Dシフトモードの作動中でもライダーの変速操作が介入できる。 ■短所 試乗時の記憶を色々たどってみても、特に短所を思い出せない。強いて言えば、1~3速での加速など、上手いライダーのシフトアップ&クラッチ操作のほうが滑らかな場合があるかもしれないが……。 ■ミニインプレッション 以前に展開した同車の試乗記に詳しく書いたが、適正なリニア感のあるマニュアルモードは、滑らかな自動発進と停止が行え、全回転域でうまい操作をしてくれるクイックシフターの変速マナーだと感じた。制御性能を上手に練ったBMWのASA機構の優秀さもあるだろうが、変速操作を足のままとし、シフトタッチの感触も通常のマニュアルシフトとほぼ同じだからとも言える。 新しい操作方法を選んだほう(この場合はヤマハY-AMTのハンドシフト)は、慣れるまでの違和感がどうしても拭えず不利な評価をされがちだが、それを差し引いてもBMWのASAは、高い完成度だと感じる。特にAT変速のDシフトモードは各ライディングモードのプログラムに沿った加速・減速時の変速の滑らかさ、同時に変速タイミングでのエンジンの制御も馴染みやすく、違和感を覚える場面はほとんどなかった。 <BMW R1300GSアドベンチャー ツーリングASA主要諸元> ■エンジン 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク106.5×73mm 総排気量1300cc 圧縮比13.3 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル ■性能 最高出力107kW(145ps)/7750rpm 最大トルク149Nm(15.1kgm)/6500rpm 燃費20.4km/L(WMTC値) ■変速機 6段リターン 変速比 1速2.438 2速1.714 3速1.296 4速1.059 5速0.906 6速0.794 一次減速比1.479 二次減速比2.910 ■寸法・重量 全長2280 全幅1012 全高1540 軸距1534 シート高820/840-850/870※アダプティブ車高制御comfort装備車両(各mm) キャスター26.2° トレール118.8mm タイヤF120/70R19 R170/60R17 車両重量269kg ■容量 燃料タンク30L エンジンオイル5.0L ■車体色 レーシングレッド/レーシングブルーメタリック/ブラックストームメタリック/アウレリウスグリーンメタリックマット ■価格 343万2000円~ report●モーサイ編集部・阪本一史 photo●岡 拓/BMW