ひどい…「不当な雇い止めだ」と訴えた男性、認められず チームリーダーだった研究者、理研で“任期は最長10年”の募集に応募…10年が過ぎ、特例で雇用されるも降格 裁判長、リーダーの地位確認も却下 契約更新への期待も合理的でない理由
国立研究開発法人「理化学研究所(理研)」(本部・埼玉県和光市)の60代男性研究者が不当な雇い止めにあったとして、労働契約の地位確認と受けた不利益など約220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、さいたま地裁で言い渡された。鈴木尚久裁判長は地位確認を却下し、他の請求も棄却した。男性側は判決後、記者会見を開き「不当判決だ」と主張し、控訴する意向を示した。 営業マン逮捕…断っても帰らず 玄関ドアに足を挟んで閉めさせない28歳「帰れと言われていない」不起訴に
訴状などによると、男性は2011年4月から1年ごとの有期雇用契約を重ね、光を使ってがんなどの現象を可視化する研究のチームリーダーを務めていた。理研は16年度、任期上限について、13年度を起点とし10年間とする新たな就業規則を導入。男性は22年に特例により上級研究員として引き続き雇用されたが、実質的にはチームリーダーから降格となり、待遇面での差や研究への損害が生じたと主張していた。 鈴木裁判長は判決理由で、チームリーダーの地位確認について、「研究チームは23年3月までに消滅し、リーダーの地位は現在存在しない」と却下した。また、11年に男性が応募した際の募集案内に「任期は原則5年、評価により最長10年」と記載されていたことなどを理由に挙げ、男性が契約更新に期待を抱くのは合理的ではないと判断した。 判決を受け、理研は「主張が認められたと認識している。引き続き法令順守と、職員との信頼関係の強化に努める」とコメントを発表した。
13年に施行された改正労働契約法では、一般の労働者は5年、研究者ら高度専門職は10年を超えて有期雇用契約を繰り返すと、無期雇用転換が可能となる「無期転換ルール」が設けられた。理研の労働組合によると、理研はこのルールを免れるために雇用上限を導入したが、組合側の反発により撤回。ただ、原告の男性らが対象となる23年3月の雇い止めは実行した。さいたま地裁には、同時期に雇い止めにあったとして、技師2人が地位確認などを求める訴訟を起こしており、来年3月28日に判決が言い渡される予定。 ■「科学の発展期待できぬ」 原告の研究者怒りの会見 「事実を考慮していないひどい判決だ。研究者が育たなくなり、科学の発展が期待できなくなる」。判決後、原告の男性研究者や関係者はさいたま市浦和区で、記者会見を開き、判決への怒りを示した。 雇い止めにより男性の研究チームは解散となり、チームリーダーから上級研究者に実質的に降格された男性が一人で研究を続けている。「世界でも最先端レベルの研究だが、一人では十分な研究結果が上げられない」と嘆く。
判決では、2011年に入所した際の募集案内に更新上限の記載があり、契約更新に期待するのは合理的ではないと判断された。原告代理人の水口洋介弁護士は「募集要項などに書いてあれば合理的期待がないことにされてしまう。研究者だけでなく、全ての有期雇用者にも影響する可能性がある」と懸念を示した。 男性は控訴の意向を示した上で、「裁判を通じて理研の違法性を訴え、理研を素晴らしい研究機関にしていきたい」と語った。