「シリアの首都・ダマスカスはなぜ陥落したのか?」その理由と今後の展開を専門家が徹底解説!
「シリアの内戦は2011年に勃発しましたが、その頃のクルド勢力はシリア北東部のトルコとの国境沿いの地域をコントロールしているだけでした。しかし、今やシリア全土の3分の1を支配している。トルコはこれを押し戻そうとしています」(菅原氏) しかし、それは米国が嫌がるはずだ。 「そうです。だから、これまでオバマ政権の時からバイデン政権に至るまで、クルドとの関係を維持し続けていました。 ただし、状況が変わったのは前トランプ政権の時です。トランプはトルコのエルドアン大統領ととても親しく、彼の話を聞いて『わかった。お前に任すから、我々は退くよ』と言ってしまいました。 米軍はトランプに『クルド民兵に任せている元IS戦士の収容所の管理ができなくなるので大変だ』と説明しましたが、トランプには理解不能。そこで米軍は『石油の利権が獲られます』と説明すると、トランプは乗せられて『石油は押さえないとダメだ』と言ってYPGとの関係を続けることにしました」(菅原氏) つまり、クルド人民兵組織YPGは、「元IS兵士9000人を野に放つ」という"核兵器"を所持しているのだ。 しかし、トランプ次期大統領はトルコのエルドアン大統領に、再び「任せたぜ」と言いそうである。 「その可能性は高いですね。しかし、その"IS人間核兵器"より、アサド政権とヒズボラの壊滅で自国を守るものがなくなったイランが核兵器を開発する可能性がすごく高い。もしイランが核兵器開発を再開し、90%の濃縮ウランの製造なんかを始めれば、米国はイスラエルに核施設攻撃のゴーサインを出すと思いますよ。 来年3月にIAEA(国際原子力機関)の理事会があります。そこで、米国もイランの核に対して何らかの動きを見せないといけない方向になるでしょうね。すると、来年は間違いなく、イランの核問題がクローズアップされると思います」(菅原氏) 取材・文/小峯隆生