政府が節電要請で「室内温度を28℃に」潜む危うさ、熱中症のリスクは?
「暑さ指数」は気温や湿度などの影響を加味して算出され、熱中症の危険度を教えてくれます。具体的には、暑さ指数が28℃を超えると、熱中症の患者さんが急に増えることが分かっています。 では、室温が28℃を超えなければ、暑さ指数も28℃を超えることはないのでしょうか? 実は、そんなことはありません。室温が28℃を下回っていても、湿度が非常に高い場合などは、暑さ指数が28℃を超えることがあります。 2020年に佐賀大学医学部附属病院などの研究チームが、訪問看護サービスを利用している高齢者(65歳以上)の自宅にセンサーを設置して、夏の2週間にわたって5分おきに室内の室温と湿度を測定し、暑さ指数を調べました。 その結果、室温26℃未満の場合には暑さ指数が28℃を超えることはありませんでした。一方で、室温が26℃台になると全体の時間の2割弱、27℃台になると全体の時間の4割ほどで暑さ指数が28℃を超えることがわかりました。研究グループは「室内熱中症予防の推奨室温は26℃未満が望ましいと推計された」と結論しています。 27日、気象庁は「関東甲信地方・東海地方・九州南部が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。関東甲信地方は統計開始以来最も早い梅雨明けとなり、長い夏が始まりました。日本気象協会によると全国的に、今夏は平均気温が平年並みか高い見通しで、エアコンなど空調設備の需要による電力ひっ迫の危機が指摘されています。冷房の設定温度を下げすぎないなど、適切な利用が求められます。 しかし熱中症は、入院や死亡にもつながる可能性があります。特に高齢者や小さいお子さんなど熱中症のリスクの高い方は、使うべきところではちゅうちょなくエアコンを使って室温を下げることが大事です。 話題の「室温28℃」について、熱中症予防の視点から気をつけておきたいポイントは以下です。 ・室温が冷房の設定温度通りになるわけではありません! 温度計・湿度計を設置して、室温が28℃になるよう設定を柔軟に調整するのがおすすめです。 ※一般に室温が28℃、湿度が70%を超える場合は、(熱中症予防の観点から)エアコンを使用することが望ましいとされています。 ・お年寄りや幼児、病気などで体力が落ちている人などは、熱中症のリスクが高くなります。暑くてじめじめする日などは、エアコンの設定温度をより低め(25~26℃くらい)にし、涼しい環境を作るよう心がけてください。 なお、これは室温とは直接の関係はありませんが、「こまめな水分の摂取」も大切です。特に高齢者の場合、喉の渇きの感覚が薄れ、体内の水分が減っていることに気が付きにくくなります。これから暑さが本番になるこの時期、喉が渇かなくても、1~2時間ごとにコップ1杯程度のお水をとるなどこまめな水分の摂取を心がけてください。