構造的に都市封鎖が難しい日本 「空間」ではなく「時間」を止めるという考え方
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。東京などでは感染経路が不明なケースも増えてきており、感染爆発が発生するかしないかの瀬戸際だといわれ、「ロックダウン(都市封鎖)をするべき」との声も出てきています。 しかし、建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「日本は構造的に都市封鎖が困難」と指摘。別の方法を提案しています。若山氏が独自の視点で論じます。
自粛要請に頼る日本
3月25日夜の小池百合子・東京都知事の会見も「ロックダウン(都市封鎖)」という言葉だけが大きく響いたが、結局は、大型イベントと、不要不急の外出と、例の「三密」の自粛要請であった。後日に行われた会見でも「ギリギリの局面」と危機感を示してはいるが、北海道知事のような緊急事態宣言を出すには至っていない。 3月27日の安倍晋三首相の会見もテレビで見たが、長期戦の覚悟、自粛の要請、そして経済の話ばかりで、どうやってこの事態を止めるのかという方針と覚悟は見えなかった。その経済政策についても、いろいろ異論があるようだが、それよりもまず感染拡大を止めなければ、はるかに大きな損失につながり、すべての数字が根拠を失うのである。 またオリンピックの延期もマスコミの大きな話題となっているが、それも日本という国が健全に運営されてこその話。今の段階で延期に生じるさまざまなことを社会問題として扱うのもどうだろうか。 この点に関してアスリートは、政治家やマスコミより冷静な態度をとっているように思われる。特に海外在住のアスリートは危機感をもって、日本が早く緊急対策をとることを訴える人が多い。彼らの言うとおり、今は感染拡大を食い止めることに全力を傾注すべきではないか。 政府関係者は、新しい特別措置法でも外出禁止を強制することはできないというが、膨大な死者を出す可能性を封じることに強い力を発揮できないということが不思議である。責任逃れとは思いたくないが。 諸外国はどこも強制力を伴う行動制限で臨んでいるのだから、「自粛要請」というお題目に頼る日本のやり方がスタンダードではないことは明らかだ。 事実、諸外国はこうした日本のやり方に対し、懐疑的な眼差しを向けている。これで失敗すれば、いや仮に失敗しなかったとしても、日本は政治的リーダーシップのない国だという評判が広がって、国際社会で相手にされなくなるのではないだろうか。