「今は、結婚する気がない」という恋人の言葉に期待してはいけない理由
結婚する気のない恋人との向き合い方を別視点で考えてみた
とまあ、ここまで書いた私は、「この書評をただの感想文で終わらせるのはもったいないな」という心境に行き着いた。どうせなら、この文章を読んだ人には少し得をしてほしい。 ということで、今回はただ読み進めて書評をするのではなく、大愚元勝さんが実際に回答した「愚かな恋」の悩みをひとつピックアップ。まずはその質問に私自身が回答したうえで、大愚元勝さんの回答と照らし合わせて感想を述べる、というプロセスをとってみたい。 同じ質問でも、人によって見解が違う。繰り返すが、「愚かな悩み(とりわけ恋愛に関するもの)」を抱える人間の心を軽くするには、とにかくいろんなパターンの答えを提示するしかないのである。 今回取り上げるのは、第3章「恋人・パートナーの悩み」から、「『今は結婚する気がない』と恋人に言われてしまいました」という悩みだ。この愚かな悩みについて、まずは私が回答しよう。 というのも、実は私は今、結婚相談所でも働いているのだ。この悩みを目にしてしまったら、黙っちゃあいられない。 さて、あなた自身に結婚願望があるにも関わらず、愛する恋人に「今は結婚する気がない」と言われてしまった。そんな時にあなたの心には、どんな台詞が浮かぶ?おそらく、「今って、いつならいいの?」とか、そんな台詞ではないだろうか。 これに関しては、結論から言ってしまおう。その台詞が出た時点で、彼が結婚する気になる「いつ」は、未来永劫やってこない。いきなりこんな辛口な言葉でぶん殴りたくはないのだが、どうか最後まで聞いてほしい。 「今は結婚する気がない」 この言葉の中で、彼ははっきりと「結婚する気がない」と述べている。悲しきかな、人は物事を信じたいように信じるから、言葉の中に置かれている「今は」という言葉にどうにか縋りついて、頭の中で「今は結婚する気がないけれど、時が来たら結婚したいな」と、都合の良い言葉をくっつけて解釈してしまうのだ。 だけど実際には、「今は」という言葉にポジティブな要素はない。むしろこの「今は」という言葉、恋愛においてやんわりとした拒絶をする時に頻繁に使われる枕詞のようなものである。 例えば、こんな台詞を言われたことはないだろうか? 「『今は』、彼女がほしくないんだよね」 「『今は』、君とは付き合えない」。 どのパターンも、結末は同じだったと思う。 残念ながら「今」がないなら、「今度」は来ないのだ。 「今は」結婚する気がない彼は、「あなたと」結婚する気がないだけ。 それを何重にもオブラートに包んで、親切にあなたに伝えてくれているわけだ。 この言葉が出た時点で、あなたがとれる選択は二択に限られている。 「結婚を諦めて彼をとる」か「彼を諦めて結婚をとる」か、である。 彼との結婚は、ない。まずはその事実を飲み込んだ上で、自分が幸せになるためにとるべき手段はどっちか、よーく考えてほしいと思う。 と、まあ、ここまでが私の回答だ。これで終わってしまうと、「書評をする」と言いつつ突然お悩み回答をしはじめた変な人になってしまうので、同じ質問に対する大愚元勝さんの回答を読んだ感想を置いておく。 …なんとまあ、非常に深い。優しくはありながら、核心をついている。 この手の話で「明日死ぬとしたら」の話が出てくるのが、大愚元勝さんらしい。私と概ね同意見でありながら、大愚元勝さんが違うのは、「さよなら」までのプロセスに寄り添っていることだ。私がすんなり答えを提示しているのと比べ、大愚元勝さんは最後の選択肢に向かうために、自分で決定するためのプロセスを伝え、寄り添っている。 おそらく、私の回答も、「合う人」に届けば同じ結果をもたらすと思う。我ながら「正しい回答」だなと思う。しかし一方で、大愚元勝さんの寄り添いは、私の回答を飲み込む準備のできていない人にも、響くのではないか、と感じた。彼の言葉にはそんな柔らかい心強さがあった。 ということで、今回取り上げた質問と同じ悩みを抱えていて、だけど私のアドバイスがまっすぐ飲み込めなかった…という人は、是非本書を手に取り、大愚元勝さんが書かれた答えを読んでみてほしいと思う。 今まさに「愚恋」に振り回されているあなたにとっては、彼の言葉がお守りになるかもしれない。 それにしても大愚元勝さん、やはり只者ではないな。 このままでは私の仕事が軒並み奪われてしまいそうなので、自分自身にお灸を据えようと思った。 文/yuzuka エッセイスト、脚本家、ナレソメノート(https://naresome.net)編集長。元精神科の看護師で夜職の経験もあり。著書「埋まらないよ、そんな男じゃ。」(逆旅出版)他3冊。「五反田ほいっぷ学園」「愛の炎罪」等原作脚本。 大愚和尚初となる恋愛攻略本 「愚恋に説法 恋の病に効く30の処方箋」 なぜ人は「愚かな恋」に振り回されるのか?その答えは、自分の命の運び方、つまりは「運命の操縦の仕方」を知らないから。叶わぬ片思いへの執着、恋人への依存、失恋への未練、パートナーの裏切りに対する嫉妬と怒り――。2600年前のブッダの教えで、人生を翻弄する愚かの恋の沼から抜け出す方法を説く新感覚の恋愛攻略本がついに誕生! 著者:大愚元勝 佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
@DIME編集部