大統領選の鍵はインフルエンサー? 「Z世代票」の獲得戦略とは
8月6日、米国3大テレビ局のひとつであるCBSは看板番組「イブニング・ニュース」で、民主党がZ世代へのアピールのためにインフルエンサーを本格的に起用し始めたと報じた。若者の支持拡大を狙ったSNS戦略が今回の大統領選にどう影響するのか、注目を集めている。 今年2月、再選を目指していたバイデン大統領は、政策の争点ともなっている中絶の権利についての情報を発信しているインフルエンサーなど数十人をホワイトハウスに招待した。TikTokで美容のヒントを発信し、50万人の登録者数をもつ23歳のインフルエンサー、アワ・サンネも招待されたうちのひとりだ。 彼女は、ホワイトハウスでのレセプションの模様や人工妊娠中絶の権利について説明する動画を投稿。特にホワイトハウスのトイレで休憩している動画は、110万回以上視聴され、多くの若者の注目を集めた。こうした投稿を踏まえ、民主党が若者票を集めるためにインフルエンサーを起用し始めたと、CBSは放送。すると、「インフルエンサーの政治への影響力について軽視してきたCBSがとりあげるとは」と大きな反響を得た。 この日、バイデン大統領はアワ・サンネ以外にも、さまざまな分野のインフルエンサーをホワイトハウスに招待。300万人のフォロワーを持つ政治評論家ブライアン・コーヘンや、LGBTQの話題を提供し500万人のフォロワーをもつジョン・ヘルフゴット、インスタグラムで25万人のフォロワーをもつコメディアンのエリザベス・ヒューストンなど著名人も含まれていた。 本来、ホワイトハウスでの取材は、著名であってもフリー記者の参加は審査が厳しい。定例記者会見などで取材証を発行されるのはほとんどが大手報道機関であることから、旧来のマスコミから見れば、危ういアマチュアであるインフルエンサーたちが招かれたことは異例の出来事であった。 ■民主党がインフルエンサー起用にかじを切ったワケ では、民主党はなぜ、インフルエンサーへの積極的なアプローチを始めたのだろうか? シカゴ大学やハーバード大学の若者を対象とする世論調査では、30歳以下でバイデンを支持していた人は3割にも満たなかったことがわかっており、若年層の支持低迷が深刻な課題とされていた民主党。こういった現状もあり、民主・共和両政党とも、今年の米大統領選では1997年から2012年に生まれたZ世代を支持者として投票させることが勝敗を左右すると認識しているのだ。 Z世代の若者は、情報収集やコミュニケーションはほとんどデジタルツールを使い、インフルエンサーとの接触率が最も高い世代。さらに、温暖化対策や医療保険の充実、社会正義などに強い興味を持つ世代でもある。 後期高齢者のバイデンが、若年層の支持率が低いことを補うため、民主党もインフルエンサーをカンフル剤として、多角的に利用することを決断せざるを得なかったのである。