「産業安全保障」確立へ 石破首相主宰の本部つくれ 中国に買われた「科学技術」日本の産官学と自衛隊、才能ある人材を結集せよ
【兼原信克 日本の覚醒】 ドナルド・トランプ次期米大統領の就任を来月に控え、米商務省は今週初め、中国への先端半導体関連の輸出規制を強化すると発表した。軍事転用できる人工知能(AI)などに使う半導体の開発能力向上を防ぐ狙いだ。科学技術は安全保障の基盤であり、米国は国防総省予算のうち、10兆円を科学技術開発費に充てている。一方、わが国では戦後、学術会議などが「軍事・防衛研究」に反対してきた。中国とロシア、北朝鮮という核保有国に囲まれた日本も、国民の生命と財産を守るために、最先端の科学技術や産業技術を安全保障に生かすべきだ。元国家安全保障局次長、兼原信克氏は、総力を挙げた安保関連技術促進を訴えた。 【比較してみる】若干フサフサに…。左が11月27日午後の石破茂首相、右が12月2日午前の姿 日本敗戦直後、GHQ(連合国軍最高司令部)が日本人から奪ったものは、「国家としての生存本能」である。日本は、徹底的な「非軍事化」の対象となった。米国は、朝鮮戦争で日本の再軍備にかじを切ったが、対日警戒心は緩めなかった。 ロシアは、日本の軍事力の徹底的弱体化を狙い続けた。それは、「非武装中立」と名前を変えて日本社会党の党是となった。そして何より、300万同胞の命を奪った戦争の悪夢が日本人を縛っていた。日本人は、安全保障を米国にすがり、自らの力で生き延びる本能を失った。 その後、日本は独立し、冷戦がはじまり、自衛隊が生まれたが、高度経済成長を演出した経済界、経済官庁は、日本の防衛に背を向けたままであった。 防衛省の技術者は村八分にされた。日本の優れた科学技術や産業技術が日本の安全保障に生かされることはなかった。各国では、「最先端技術の研究開発こそが、国家安全保障の根幹である」という国民的コンセンサスがある。だから、政府による巨額の安全保障目的の研究開発・生産支援は、自由貿易ルールの枠外として容認されてきた。 例えば、米国では20兆円という政府研究開発予算の半分が、国防関係に振り向けられる。それだけではない。リスクが大きくて「死の谷」と呼ばれる新技術の製品化に際して、スタートアップ支援に巨費が投じられている。 日本にはこのように仕組みがない。安全保障と経済を結び付ける発想がない。だから負けたのである。サイバー防衛技術も、量子通信技術も、中国に突き放されている。蓄電池技術は、日本から中国に買われていった。その結果が、中国の電気自動車メーカー、BYDのEV(電気自動車)であり、中国軍のドローン兵器ではないのか。