定年退職金で投資をはじめるなら…メガバンク出身のコンサルタントが「銀行が勧める投資商品はダメ」と言い切る理由
投資の原則「長期・分散・積立」+“手数料を抑える”意識を
投資の大原則として、「長期・分散・積立」の3つを基本にすべきだと私は考えています。そして、もう1つ大切な原則が、「手数料の安い商品」に投資するということ。 私が2021年に出版した『定年ひとり起業マネー編』(自由国民社)では、老後資金の作り方、年金制度の将来展望、投資法などについて書いたのですが、最も反響が大きかった箇所が「銀行が勧める投資商品がダメな理由」という第3章でした。 銀行が勧める投資商品は手数料が高い なぜ、銀行が勧める投資商品がダメかといえば、ズバリ、「手数料の高い商品」を勧めてくるからです。 冷静に考えてみればよくわかることですが、銀行は投資商品を販売する手数料収入をビジネスとしており、そもそも手数料は安い方がいい顧客とは利益相反の関係にあります。 高い手数料よりも運用のパフォーマンスが良ければ、顧客にとってもプラスになるからいいじゃないか、という意見もあると思います。窓口の銀行担当者もそう説明しますが、そもそも高い手数料を上回るパフォーマンスを上げられる投資商品はごくわずかしかないのです。 手数料を引いたら元本割れする商品があまりにも多かったというのがこれまでの実績で、だから知らないうちに退職金で投資した商品で元本が半分になったり3分の1になったりした人が続出しました。 投資商品としては、証券会社では個別の株式への投資を勧めますが、銀行では投資信託を勧めることが多く、ほかに外貨預金、保険商品や仕組債などですが、共通するのは手数料の高い商品ばかりです。そもそも販売担当者に手数料収入のノルマ(行内では目標という言い方)があるので、手数料の安い商品を勧めるはずがありません。
「投資信託」のなかでも、「インデックス投信」を選んで
私が勧めるのは、手数料のできるだけ安い投資信託。それはインデックス投信といって、株式の指数に連動する投資信託で「パッシブ投信」と言われるカテゴリーに入ります。 反対が「アクティブ投信」で、こちらは株式の銘柄選定などの目利きができるファンドマネージャーが行うという触れ込みで、株式銘柄の調査分析コストや高額年収のファンドマネージャーへの報酬コストが手数料に含まれています。 これだけのコストをかけて調査分析をした結果、インデックス投信のパフォーマンスに勝てるアクティブ投信はそもそも3割以下しかない、というのがこれまでの実績。 日本よりずっと歴史や規模があるアメリカの株式市場での実績では、期間が長くなるほどインデックスに勝てる投信は少なくなっていきます。たまたま勝てる年があってもそれが長くは続かないというのがこれまでの結果です。 勝てる投資信託を当てられる可能性は少ないし、当てられたとしてもずっと勝ち続けられるかどうかは保証の限りではありません。だったらインデックス投信を買っておいた方が間違いはない、となるわけです。 アメリカ株式市場での実証分析を詳しく知りたい方は、バートン・マルキール著『ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第13版〉』(日本経済新聞出版)およびチャールズ・エリス著『敗者のゲーム[原著第8版]』(日本経済新聞出版)をお読みください。どちらも長く読み継がれている名著です。 おすすめは「ドル建て」のインデックス投信 それと、私がもう1つこだわっているのは、外貨建て(ドル建て)のインデックス投信がいいということ。2050年に向けた中長期では円安ドル高の為替トレンドになると私が予測しているからです。 これから追加で1億人の人口が増える世界トップの経済大国アメリカと2000万人以上人口が減って1億人を割り込む日本と、どちらの通貨の価値が上がるでしょうか、という話です。 私の予測よりは早いタイミングと速度で円安トレンドになっていますが、もちろん今後も揺り戻しの波はあります。 しかし、まだまだこの円安の潮流が続くと私は見ています。 大杉 潤 経営コンサルタント/ビジネス書作家/研修講師