尹大統領、出国禁止に 韓国野党は首相が国政担う方針を「2度目のクーデター」と批判
韓国の法務当局は9日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の出国を禁止した。汚職捜査担当の主任検事が要請していた。尹氏に対しては、先週の非常戒厳の宣布に関して、内乱容疑などで捜査が進められている。こうしたなか野党議員らは、尹氏と与党が権力にしがみつくことで「2度目のクーデター」を起こしていると非難している。 出国禁止の措置は、尹政権の高官数人も対象となっている。 尹氏は3日夜に突如として非常戒厳を宣布し、国民に衝撃を与えた。野党は弾劾訴追案を出したが、7日の国会で投票が不成立に終わった。 与党「国民の力」の韓東勲 (ハン・ドンフン) 代表は8日、「大統領は、辞任するまで、外交を含むいかなる国務にも関与しない」と発表した。 尹氏が早期に「秩序ある辞任」をするまでは、与党と韓悳洙(ハン・ドクス)首相が国政を担うとした。 これに対し、最大野党「共に民主党」の朴贊大(パク・チャンデ)院内代表は、与党の案を「違法、違憲の2度目の内乱で、2度目のクーデターだ」と批判。 「共に民主党」の金民錫(キム・ミンソク)最高委員も、与党の韓代表にそうした決定権を「誰も与えていない」と非難した。 韓国紙コリア・ヘラルドによると、金氏は「首相と与党が、誰からも与えられていない大統領権限を共同で行使すると発表したことは、明らかに違憲だ」と述べた。 ソーシャルメディアでは、誰が国を率いているのか明確ではないと、多くの国民が懸念を表明している。 一方、国防省は9日の記者会見で、大統領が軍の指揮権を保持していると述べた。これは、北朝鮮の脅威などの外交問題が発生した場合、理論上はまだ尹氏が、大統領としての決定を出すことを意味する。 ソウルにある明知大学のシン・ユル教授(政治学)は、「大統領が考えを変えたら、いつでもまた国を率いることができる」、「尹が言い張れば、誰も止めることはできない」、とコリア・ヘラルドに話した。 ■毎週土曜に弾劾投票をすると 尹氏の非常戒厳の宣布をめぐっては、野党6党が「内乱行為」に当たるとして尹氏の弾劾を求めた。ソウルでは尹氏の辞任や弾劾を要求する抗議集会が開かれ、何万人もが参加した。 尹氏は4日朝に非常戒厳を解除して以来、公の場で発言していなかったが、7日朝になって「国民に不安と不便をもたらした」と謝罪。同日夜の国会本会議で、弾劾訴追案は不成立に終わった。 これに対し、野党側は尹氏の弾劾を「あきらめない」とし、弾劾訴追案の投票を毎週土曜日に実施していくと宣言している。 「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は7日、弾劾訴追の試みが失敗に終わった後、落胆した群衆に向かい、「クリスマスと年末までに必ず、この国を正常な状態に戻す。そしてそれを、クリスマスと年末のプレゼントとして皆さんに差し上げる」と述べた。 李氏は9日の記者会見で、改めて尹氏の辞任を要求。尹氏の行動が国と経済を「破壊している」と述べた。 (英語記事 South Korea orders travel ban for President Yoon)
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