《ブラジル記者コラム》 次の4年間は日系社会の正念場か=G20を移民120周年への弾みに
この1年間で日本から首相と20人の閣僚がブラジルへ
1日から2024年11月30日まで、ブラジルはG20議長国を務める。先進国G7に新興国群を加えた主要20カ国で、EU、アフリカ連合も「地域」として加わる。G20の20カ国・地域の国内総生産(GDP)を合計すると、世界の9割を占め、貿易総額は世界の80%。加盟国の総人口は世界の3分の2ほどになる。 もはやG7だけでは世界経済の舵取りができない現実に直面した前世紀末の1999年、世界経済大国20カ国が深刻な金融危機の解決策を模索する目的で初会合を開いた。 ブラジルが議長国を務める関係で、今月から来年11月まで国内の諸都市で約20の閣僚会合、50のハイレベル会合、サイドイベントを含む100以上の公式会合を開催する。目玉は2024年11月18日と19日にリオ・デ・ジャネイロで開催される第19回首脳サミットだ。
新年は伯中国交樹立50周年の節目
もう一つ、来年4月は伯中国交樹立50周年の節目でもあり、昨年4月にルーラ大統領が訪中した際、習近平中国主席にブラジルへの招待をした。 11月のリオ首脳サミットを加えれば、習近平主席は来年2回もブラジルを訪れる可能性がある。PT政権になったブラジルにとって、中国との更なる経済的な緊密化は大きな課題だろう。 この機会に、電気自動車生産などを始めとする経済交流拡大や、文化普及などを通しての中国のイメージ向上、中国系コミュニティ活動の活発化などの可能性がある。それが日系社会にどのような影響を及ぼすか、冷静に観察したいところだ。
2025年は文協創立70周年、日伯修好130周年の節目
「日系社会としても、世界の首脳が集まるこの機会を活かして、何かできないだろうか。1月には岸田首相がブラジルに来るかも」と考えていた矢先、11日付毎日新聞は《首相、年明けの南米訪問見送りを検討 自民裏金疑惑、外交にも影響》と報じた。《岸田文雄首相は、2024年1月上中旬に予定している南米訪問を見送る検討に入った》と書かれている。 万が一そうなったとしても、来年11月の首脳サミットには必ず日本の首相は来る。というか、それ以前に《国内のさまざまな都市で約20の閣僚会合、50のハイレベル会合、サイドイベントを含む100以上の公式会合》が予定されており、閣僚(大臣クラス)が日本から続々とくる。それだけでもブラジルではかつてないことだ。 移民110周年の後の閣僚クラスの要人往来(2)を見てみると、年に1~2人が良いところだ。 それが新年には20人以上が来る可能性がある。その要人がみな出身県の県人会などの日系団体と会合を持つか分からない。だが、これだけの要人が続々とブラジルを訪れることはかつてなかった。この機会に日系社会としても日本に何かをアピールしてもいいのでは。 というのも再来年2025年はブラジル日本文化福祉協会創立70周年と共に、日伯外交関係樹立130周年(日伯修好通商航海条約130周年)という節目の年だ。 振り返ってみれば▼日伯修好100周年の1995年11月には清子内親王殿下(当時)▼日伯交流年・移住100周年の2008年6月には皇太子殿下(現陛下)▼日伯外交関係樹立120周年の2015年10月~11月には秋篠宮同妃両殿下(現皇嗣同妃両殿下)という皇室の御来伯を頂いた。 ならば、2025年の日伯外交130周年にも備えておくことが肝要ではないか。移住100周年の折には皇太子殿下(現陛下)にサントス日本人学校までご足労いただき、移住110周年の2018年7月に眞子内親王殿下(当時)に来伯いただいたときは、初めてサンパウロ州奥地マリリア、平野植民地、プロミッソン、アラサツーバにも足を運んでいただいた。 もしも2025年にも皇室にご来伯いただけるなら、次はモジ・ダス・クルーゼス、バストスやアルバレス・マッシャード(プレジデンテ・プルデンテ)などの日系集団地にもぜひご訪問いただければとの声も聞こえてくる。単に期待するだけでなく、各地から積極的に総領事館に相談を持ち掛ける必要がある。