《ブラジル記者コラム》 次の4年間は日系社会の正念場か=G20を移民120周年への弾みに
ブラジルが文化的多様性を維持するために
振り返れば、移民100周年を4年後に控えた2004年、当時のブラジル日本移民百周年記念祭典協会の上原幸啓会長は「日伯総合センター」建設計画の要請状を小泉純一郎総理に提出した。総工費6千万米ドル(約85億円)だ。 いわく《日本や日系団体の文化や伝統、知識など一カ所に集め、ブラジルの日系団体間での団結や交流を可能にし、この国で日本移民が築いた両国への信頼と教養と文化を高めることが日伯総合センターの主な目標です。日本人とその子孫たちが誇りを持つ場所を作ることが今日本ブラジル両国の発展に一番大切なことなのです》と書かれている。 当時の1世の多くや邦字紙はこれに反対するなど紆余曲折を経て、この日伯総合センターは実現しなかった。だが時代は変わった。今こそ見直す時かもしれない。 新年から2028年までの4年間は次の50年間を占う節目という意味で、日系社会にとっても正念場だ。放っておけば日系社会は溶け込んでいき、100年後に残るのは苗字だけということになりかねない。2058年に移民150周年が、2108年に移民200年が祝われるかどうかは、この4年間にかかっている。 来年、世界最大規模の資源や食糧の供給大国であることに加え、OPECプラス(石油輸出国機構)の一員、BRICS創立メンバー、さらに「G20議長国」という世界的大任を果たすブラジルの立場を活かし、日系社会も次世代に残せる何かを企画してもいいのではないか。 グローバルサウスの中でも特別な存在感を持つブラジルにおいて、日系社会が良いイメージを持ち続けることは日本の国益にもつながる。ブラジルが現在のような文化的多様性を維持し続けるためには、日系社会が今後とも相当な努力を続けることが期待されている。 ☆ 時間がたつのは早いものでブラジル日報も2年目の年末を迎えた。当コラム子担当の記者コラム欄も今回が今年最後。今年の通常号の最終日は23日(土)付けだからだ。ちなみにその際、新年号も同時に発行する。その後に1週間のお休みをもらい、新年は3日(水)付が最初の発行となる。 読者の皆様、旧年中はご愛読ありがとうございました。新年もよろしくお願いします。(深)