クオンツのクローン商品、利便性に複製元ヘッジファンドも抵抗できず
(ブルームバーグ): 5000億ドル(約78兆6000億円)規模のクオンツ複製(クローン)トレードに、意外な利用者が加わった。戦略を複製される側のクオンツ運用者だ。
大手銀行が戦略を模倣するこうしたクオンツのクローン商品を、ヘッジファンドはかつて敵視していたが、今ではクオンツ投資戦略(QIS)ブームの盛り上げ役に転じている。
QISでは人気の高いクオンツ戦略がスワップや仕組み債に姿を変え、手早く安価にエクスポージャーを得られるツールになっている。学術研究の場で誕生することの多いクオンツ戦略は、AQRキャピタル・マネジメントやディメンショナル・ファンド・アドバイザーズといったクオンツファンドの先駆者が、何十年もかけて洗練させてきた。この戦略が容易に複製されることを、ヘッジファンドは昔から非難してきた。
それにもかかわらずQISを利用する側に回る資産運用者が増えているのは、その利便性に抵抗できないからだ。
ジュネーブの資産運用会社ドミニセのオプショントレーダー、ピエール・ドゥサーブ氏もその一人だ。同氏は過去にQISの硬直性を理由に相場急落時にパフォーマンスが悪化すると指摘、自分のようなヘッジファンドマネジャーの代わりにはなれないとリポートで論じていた。しかし昨年からは新たなポジションを取るのに手軽な手法として、同氏もQISを利用するようになった。
「何か新しいことをするたびにトレーダーを雇うのは大変だ」と、15億ドルを運用するドゥサーブ氏は語る。「QISはスタート地点として使えるし、取引執行をアウトソースする手段にもなる。そうすればもっと付加価値の高い仕事にスタッフは取り組むことができる」と説明した。
同氏は用いる戦略の具体的な詳細には触れなかったが、自身のポートフォリオで約5%をQISが占めていると明らかにした。
QIS採用が資産クラスを問わず加速している背景には、その戦略の多くに金利上昇という追い風が吹いていることがある。ブルームバーグ・ニュースが確認したアルボーン・パートナーズの調査によれば、ブローカーディーラー13社の想定元本エクスポージャーは合計5520億ドルに膨らみ、過去最高を記録した。