日本ハワイ移民資料館が原田裕規《Shadowing》を収蔵。初の現代美術作品
山口県にある日本ハワイ移民資料館が、原田裕規の作品《Shadowing》(2023)を収蔵した。 日本ハワイ移民資料館は1999年に開館。アメリカに渡り貿易商として成功した故・福元長右衛門が1928年に建設した邸宅を再生活用したもので、明治期以降、多くの島民がハワイに渡った周防大島の移民の歴史を伝えるために、当時の暮らしを知ることのできる資料や道具を展示している。 同館が昨年開催したのが、山口県出身のアーティスト・原田裕規の個展「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」(キュレーション:塚本麻莉)だ。 原田は1989年生まれ。人間の人間らしさとは何かをテーマに、テクノロジー、リサーチ、パフォーマンスなどを駆使して作品を制作している。2012 年に「ラッセン展」の企画でデビューし、議論喚起型のプロジェクトからその活動を開始。2019年以降は断続的にハワイに滞在し、ピジン英語に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目している。23年には「 TERRADA ART AWARD 2023 」で神谷幸江賞を受賞。また今年11月からは、広島市現代美術館で個展を開催する。さらに書籍として、単著『評伝クリスチャン・ラッセン』(中央公論新社、2023)、『とるにたらない美術』(ケンエレブックス、2023)、編著『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社、2013、増補改訂版=2024)などでも知られており、今後さらなる活躍が期待される作家のひとりだ。 「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」では、周防大島とゆかりの深い「ハワイ移民」や島出身の民俗学者・宮本常一(1907~1981)の著作をモチーフとした映像作品《Shadowing》を展示した。今回収蔵されたのは、同展のために制作された4作品だ。日本ハワイ移民資料館にとっては初の現代美術コレクションとなる。 作品は6月12日から館内での常設展示が開始。原田にとっても作品の常設化は初の機会となる。