「おしゃれすぎるキッチン」には罠がひそんでいる!?安易な理想だけで家をつくってはいけない理由
これまでの理想は思い込み?「真の理想」を実現する家づくり
インテリア雑誌などで機能性や収納力が高く、デザインもおしゃれなキッチンの写真を見て、あまりの素敵さにため息をついたことがある人は多いと思います。特に毎日の食事づくりにいそしんでいる人にとっては、キッチンでスムーズに動けるか、リラックスできる雰囲気になっているかどうかはとても重要な問題ですよね。 心躍るような住み心地! 内山さんが手掛けた家の一例 では、自分が感じた素敵さをそのまま投影すれば快適に過ごせるキッチンになるのか、というと疑問符がつくようです。 まず考慮しなければいけないのは家族構成や生活スタイル。実像に合ったデザインや機能でなければ使い勝手が悪くなり、後々嫌気がさすかもしれません。さらに突き詰めれば、雑誌やテレビなど他者のフィルターを通して形成された「理想」は、自分にとって本当の理想ではない可能性もあります。 そういった思い込みや間違って刷り込まれた常識を正し、真の理想の家づくりへの道を提示してくれるのが、気鋭の建築家・内山里江さんの著書『家は南向きじゃなくていい』です。 今回は、家全般についての有益なアドバイスが詰まった本書の中から、「キッチン」および「ダイニング」に言及した部分を抜粋いたします!
食事時間の短い家庭は「キッチンダイニング」が最適
食事にゆっくり時間をかけられない忙しいご家庭には、大きなダイニングテーブルを置くスタイルよりも、キッチンと合体したカウンター形式の「キッチンダイニング」のほうが合っていることも多いです。キッチンと向かい合う形のカウンターで食事をするのです。 キッチンとカウンターがつながっているため、料理やお皿を運ぶために移動する手間が省け、さくっと食事をすませたい人や、家族の食事時間がバラバラなご家庭などには大変効率的なスタイルです。キッチンで家事をしつつ、カウンターで宿題をする子どもの様子を見たり会話したりできるし、忙しい日々のなかでも家族とのコミュニケーションを大事にしやすい利点もあります。
キッチンとカウンターの高さに要注意
なお、このようなカウンター形式の場合、キッチンとカウンターの高さのバランスにはよく気をつけねばなりません。「カウンター用の椅子は高さがあって長く座ると疲れるから通常のダイニングチェアを置こう」と考える人もいらっしゃいますが、カウンターをダイニングチェアの高さに合わせてしまうとキッチン側からカウンターに手が届きにくくなり、家事効率が一気に落ちてしまいます。料理を出したり皿を下げたりといった度にキッチンからカウンターまで回り込む必要が生まれ、わざわざキッチンとカウンターをくっつけるメリットが台無しになるのです。 たしかに、カウンターに合わせた椅子は、太ももが座面と並行ではなく斜めになることから、長時間座るのには不向きです。そのため、このようなスタイルのダイニングを選ぶなら「食事はささっとすませ、くつろぐのは別の場所」が前提条件です。「ダイニングテーブルを囲んでゆっくり時間を過ごしたい」とのご要望がある場合は別の形を考えるべきでしょう。 あくまで、必要もないのに広々としたダイニングスペースを確保することはない、という話です。