ヘルシア売却で「緑茶サバイバル」号砲 生茶、伊右衛門も背水の陣
ペットボトル緑茶の世界で、生き残りを懸けた「サバイバルレース」が始まった。 口火を切ったのは、キリンホールディングス(HD)傘下のキリンビバレッジ。2月1日、日用品大手の花王から茶カテキン飲料「ヘルシア」の事業を譲り受けると発表した。この8月からヘルシアは、キリンブランドで再出発を図ることになる。 【関連画像】伊右衛門の新テレビCMには堺雅人さん(左)と古川琴音さんを起用した ヘルシアは花王唯一の飲料ブランドで、かつ累計約31億本を販売したロングセラーブランドでもある。特に2003年にデビューした「ヘルシア緑茶」は、お茶として初めて体脂肪を低減することをうたった特定保健用食品(トクホ)として一世を風靡したが、近年は失速。伊藤園の「お~いお茶 濃い茶」や、サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門 特茶」といった競合商品に押され、伸び悩んでいた。 ●看板ブランドでも切り離し 23年秋には起死回生の一手として、リブランディングに着手。ヘルシアを“擬人化”して電車ジャック広告を打つなどのマーケティングに乗り出したばかりだった(関連記事:花王「ヘルシア緑茶」が擬人化マーケ シェア4位から巻き返し期す)。だが「非効率事業」として切り離す道を選んだ。 花王はヘルシアについて足元では反転攻勢の兆しが出てきたとしながらも、長谷部佳宏社長は日経ビジネスの取材に対し、「20年間頑張ってきて、研究にもずいぶん力を入れたが、我々の会社のフォーメーションに合わなかった。飲料はどうしてもコア事業にならず、限界があった。継いでいただける企業を探していた」と吐露する。 キリンHDと花王は、互いのトップすら知らないうちに、研究者同士が以前から交流を深めていたといい、「キリンさんだったら、自分たちが育ててきたヘルシアをお渡しできる。里子に出しても、安心して大人にしていただける」(長谷部氏)と決断した。 キリンHDは、免疫機能を維持する効果が期待できる、独自素材のプラズマ乳酸菌を配合した商品を数多く展開するなど、ヘルスサイエンス事業を強化している。23年12月には、ヘルシアにプラズマ乳酸菌を加えた「ヘルシア緑茶プラス 免疫ケア」を花王から発売するなど、両社は急速に接近していった。 キリンHDの磯崎功典社長は「ヘルスサイエンスの領域に入っていくということは、相当しっかりした科学的な根拠がないといけない。プラズマ乳酸菌の次は何か、とよく言われるが、そんなに簡単に商品は出ない。ヘルシアが加わることで大きなポートフォリオの柱ができた。譲り受けた以上は立派なブランドに育てていく」と決意を込める。 ヘルシアを手中に収めるキリンビバレッジだが、それでもなお盤石とはいえない。 ペットボトル緑茶をめぐるサバイバルレースでは、伊藤園の「お~いお茶」が独走し、サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門」、日本コカ・コーラの「綾鷹(あやたか)」が2位争いを繰り広げている。キリンビバレッジの「生茶」はそのさらに後方を走っている状況だ。