ヘルシア売却で「緑茶サバイバル」号砲 生茶、伊右衛門も背水の陣
生茶の“没個性化”に危機感
キリンビバレッジにとって、生茶のてこ入れは急務。同社の吉村透留社長は24年の事業方針説明会で、「既存の緑茶とは一線を画した新しいペットボトル緑茶として、この4月に生茶ブランドを刷新する」と宣言した。 背景には、緑茶というカテゴリー自体が没個性化しているという危機感がある。「(消費者から)『ペットボトル緑茶はどれも一緒でしょ』と思われ、コモディティー(汎用品)化が進んでいる。生茶ブランドから新たな価値提案をし、コモディティー化から脱却していきたい」(吉村氏) 4月9日に全国発売する新生「キリン 生茶」「キリン 生茶 ほうじ煎茶」は、見た目から大きく変えた。 緑ではなく白をベースに、雫(しずく)を大きく描いたデザインで、「現代的で上品なたたずまい」(キリンビバレッジ執行役員マーケティング部長の成清敬之氏)を目指した。手に取ることで暮らしを彩り、気持ちを上げる「自己表現のアイテム」としてペットボトル緑茶を再定義したい考えだ。 中身も、「凍結あまみ製法」を新たに採用し、微粉砕茶葉を現在の約3倍に増やすなどして、苦渋みを抑えながら、新茶のような「あまみ」が際立つ味わいに仕上げたという。 ●濃さで挑む「伊右衛門」 あまみを押し出した生茶に対し、発売20周年を迎える伊右衛門は「濃さ」を前面に出して3月12日に全国発売した。 サントリー食品インターナショナルでブランド開発事業部部長を務める多田誠司氏は、緑茶の伊右衛門の現在地について「20年のリニューアルで回復するも、この2年は低迷し、23年の販売数量は(前年比7%減の5740万ケースと)過去最低となってしまった。日本茶は、飲料市場で最も大きいカテゴリー。ここで負けるわけにはいかない」と熱を込めた。 伊右衛門は、なぜ低迷しているのか。多田氏はその一因として「緑茶ならではの独自価値が希薄化してしまった結果、いわば単なる止渇飲料になってしまった」ことを挙げる。 「年々気温が上昇し、日本が亜熱帯化している。水分補給ニーズが強くなり、よりすっきりとゴクゴク飲める味わいに各社同質化していった」(多田氏)。やはり生茶と同様、緑茶のコモディティー化のあおりを受けたという認識だ。 どれも同じような味わいであれば安いほうがいいと、値ごろ感のあるプライベートブランドの緑茶が台頭し、麦茶やミネラルウオーターへの流出も加速しているという。 伊右衛門らしい緑茶とは何か――。発売以来タッグを組む京都の老舗茶舗「福寿園」とともに、ゼロベースで考えた結果、豊かなうまみと濃さが鍵だと狙いを定めた。