68歳で年金生活です。「生活保護」は子どもに内緒で受けられますか? 生活が苦しいですが、できるだけ心配をかけたくないです
老後の生活を支えてくれる「年金」ですが、受給額によっては生活が苦しいこともあります。年金だけでは生活が成り立たない場合、「生活保護」の受給を検討する人もいるでしょう。 しかし生活保護を受けるにあたって家族に連絡がいくことを考えると、「心配をかけてしまう」「お金に苦労していると思われるのが恥ずかしい」と躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいるかもしれません。家族に連絡されることなく、生活保護を受けることはできないのでしょうか。 ▼「生活保護」の受給要件とは? 親族への扶養照会は必須なの? 本記事では生活保護の「扶養照会」と生活保護を受ける前にできることについて解説します。
生活保護の受給要件
厚生労働省では、生活保護の趣旨を次のように示しています。 「生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。」 生活保護は「最低限度の生活」を保障する目的で作られた制度です。厚生労働省では「最低生活費」を設定していて、現在の収入・公的制度・家族の援助がこれに満たない場合、その不足分を「保護費」として支給します。 受給要件は「世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提」であり、「扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先」されるとしています。この要件を満たすための「活用」とは、次のとおりです。 ●預貯金や、住居以外の不動産などの売却 ●働くことが可能な場合は、能力に応じて働く ●年金や手当など他の制度の給付を受ける ●親族からの援助が受けられる場合は受ける これらの条件をもとに家庭状況を把握する実地調査がおこなわれ、生活保護が必要だと判断されると、「保護費」が支給されることになります。
扶養照会が不要な場合
生活保護を受けるにあたって、「親族の援助」が得られるかという調査があります。これを「扶養照会」といいます。これは生活保護法第4条第2項において、「扶養義務者の扶養は保護に優先して行われる」ものと定められているからです。しかし必ずしも親族が扶養しなければいけないわけではありません。 さらに「扶養義務の履行が期待できない」と判断される扶養義務者には、基本的に扶養照会をおこなわないことになっています。 例えば扶養義務者である子どもが、長期入院患者や専業主婦(夫)で収入がない場合、親子関係が良好でない場合、過去に暴力を受けていた場合などは「扶養義務の履行の期待ができない」ので、扶養照会がおこなわれないことがあります。