夏の甲子園で史上初逆転サヨナラ満塁弾を生んだタイブレーク導入は成功か
またタイブレーク導入には記録上どう扱うのかという問題もある。 逆転サヨナラ満塁本塁打は、史上初であるが、最初から2人の走者をおいたタイブレークの記録を史上初と位置づけていいものかどうか。「タイブレーク参考記録との注釈をつけるべきではないか」との声もある。また本塁打を打った矢野には、打点「4」が記録されたが、打たれた星稜の寺沢孝多には、2人の走者の自責はカウントされず失点「4」自責「2」という記録の扱いになっている。 前出の後原氏も「記録という意味では、筋が通らないことになる。過去に甲子園の延長戦ではPL対横浜のように多くのドラマがあって、18回で勝負がつかず引き分け再試合というものもあった。そういう高校野球の伝統や過去の記録というものとの比較が難しくなる」と問題視する。 一方の里崎氏は「そもそも野球の記録は平等なものではありません。例えば、延長何回と投げていても、最多奪三振が記録として残るわけですから。そう考えると、このサヨナラ逆転満塁本塁打を参考記録などとする意味もないのではないですか?」という意見。タイブレークでの記録の扱いには議論があっていいだろう。 6点差をひっくり返して感動のフィナーレを演じた済美の野球は凄かった。その普遍的な事実には、タイブレーク云々の是非は、関係がないのかもしれない。記録的な猛暑の中、このルール適用は、選手の健康管理の助けにもなった。だが、「選手ファースト」を考えるのならば、タイブレーク導入よりも先にやるべきことはなかったか。