夏の甲子園で史上初逆転サヨナラ満塁弾を生んだタイブレーク導入は成功か
元プロ野球出身の監督第1号として広島の瀬戸内高校時代に甲子園出場経験のある後原富氏は、「記録的な酷暑で、足をつる選手などが続出する状況だから、結果的に選手の健康面を考えるとタイブレークの導入は正解だったし、ある意味、仕方なかったのでしょう。投手の球数、酷使の問題もあります。時代の流れでしょう。済美の試合は劇画の世界でしたね。でも、面白かったというのは、見る側の理論。やる側の理論で考えると、もっと他の手法を議論すべきかもしれません。このタイブレークの導入には、日程やテレビ中継の問題など、たぶんに商業主義の匂いもします」と、複雑な意見を口にした。 そもそも春夏の甲子園は巨大な興行ではあるが、高校野球は教育の一環としてのスポーツなのである。 元千葉ロッテで評論家の里崎智也氏は、「僕はどっちでもいいというスタンス(笑)。やったらこうなりますよ、これでいいんでしょう?というのが感想です。高校野球ファンの方は、面白いと感じるのかもしれません。でも、どちらのチームを応援するかで、良かったという意見も、文句も出ますよ。僕は、導入理由に矛盾を感じます。選手の健康管理、投手の球数軽減などが理由らしいですが、将来、プロに進む選手が、どれだけいるのか。社会人、大学もそう。極端な話、甲子園で野球人生は終わりと思っている選手も多いだろうし、そういう決意の選手にとって、球数など関係ないんです。本当の意味で選手の健康管理を目的とするのならば、まず日程の組み方を工夫すべきだし、記録的な酷暑の中、タイブレークをやって良かったというような声があるとも聞きますが、暑さ対策をするのならば、早朝、ナイター開催にすればいいわけで、どうも曖昧さを感じます」と、冷静なコメントを寄せた。 WBCなどの国際大会でタイブレークは先に導入されていたが、これは大会運営上の理由が主だった。テレビ中継の枠と、短期間に何試合も行う国際大会では、そういう決着のつけ方をしなければ日程が消化できず、東京五輪でもタイブレークが導入される方向だ。社会人野球や、大学では全日本大学選手権でも導入されているが、「円滑な日程消化のため」が主な理由。大学では、東日本大地震後の節電対策という理由もあった。だが、高校野球だけが選手の健康管理が主たる理由だという。里崎氏が問題提起するのも当然だろう。