「ホテルに行ったがしていない」は裁判官に通じますか? 幾多の判例が示す「不貞行為」の境界線【弁護士が解説】
<strong>勝ちとれる慰謝料額</strong>
おおむね10万円~300万円くらいです。裁判所は以下の事情などを総合考慮して金額をハジき出します。 (以下、X:あなた A:配偶者 Y:浮気相手) ・婚姻期間 ・子どもの年齢、養育状況 ・不貞の期間、回数 ・AとYのいずれが主導的であったか。 ・XがYに対して「Aとの関係を絶ってほしい」と申し入れたか ・XとAは離婚したか ・XA間が悪化した原因がAYの不貞行為以外にもあるか ・XとAの夫婦関係が円満であったかどうか ・同居か別居か ・Xも別人と不貞関係にあったか ・XはAを許しているか ・XのYに対する報復行為の有無、 内容...etc 人生いろいろ、男もいろいろ、女だっていろいろ、不倫関係はカオスなので、さまざまな事情を考慮して裁判官が金額をハジき出すのです。
浮気相手とご対面
ケジメをつけようと思って、浮気相手と会って話をしたい方もいらっしゃるでしょう。慰謝料を支払ってもらおうと思い、念書へのサインを求められる方もいるかもしれません。 注意しなければならないのは、高額すぎる金額は無効だということです。 実際の裁判では、夫が妻の浮気相手をファミリーレストランに呼び出して【慰謝料1000万円】という念書にサインさせた事件がありました。裁判所は「たかすぎ...。150万円だけ認める。それ以上は公序良俗に反して無効」と判断しました。 <アドバイス> しかし…配偶者の浮気相手にお仕置きをする時は、ちょい高めの違約金を書いた誓約書にサインしてもらうのがいいですね。裁判官が「これくらいは違約金をもらっていいでしょ!」というラッキーパンチを与えてくれるかもしれませんから。仮に高すぎたとしても裁判所が相場の金額を認定するだけで、マイナスにはなりません。
夫婦関係が破綻していれば...
残念なお知らせです。夫婦関係が破綻していれば慰謝料請求は認められません。すこしカタ苦しくなりますが理由をご説明します。 そもそも浮気で慰謝料が発生するのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害するからです。そうすると、夫婦関係が破綻していたときに浮気相手が配偶者とSEXしたとしても、別に婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害したとはいえないからです(最高裁 H8.3.26)。 「どういった状況なら破綻していると認定されるか?」ですが、別居期間の長さ、家庭内別居の状況、2人の冷えっぷりなどさまざまな事情を考慮して裁判官がジャッジします。 裁判になれば浮気相手はほぼ「この夫婦はすでに破綻していた!」と反論してきます。あがいてきます。肉体関係の前に夫婦関係が破綻していたと認定されたら浮気相手が勝つからです。今日もどこかの裁判所で「夫婦関係は破綻していたか?」について熾烈な戦いが繰り広げられていることでしょう。 ▽浮気相手に慰謝料請求したい方へ 夫婦関係がオワっていたと認定されたら負けです。ですので、弁当を作る、ねぎらいのLINEを送るなどしてみてください。裁判所に「こりゃ形だけだな...」と思われたら負けですが「夫婦関係は瀕死寸前だけど、いまだご存命!」と思ってもらえたら勝ちです。 裁判では、絶対的な真実はありません。【裁判官の目に映る事実】が【真実】です。 慰謝料請求の交渉や訴訟をご自身で行うのは至難のワザなので、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをオススメします。 弁護士さんから必ず言われるのは「証拠はありますか?」です。配偶者や浮気相手に慰謝料請求したい方は、今日から証拠あつめに奔走しましょう。 ◆林 孝匡弁護士 PLeX法律事務所 「ムズイ法律を、おもしろく」がモットー。情報発信が専門の弁護士です。多くのwebメディアで法律知識をお届け中。おもに男女問題や労働問題。 ◇ ◇ 「リコ活」は、夫婦問題の課題解決型メディアです。夫婦関係のトラブルや離婚で悩む人に、専門家とのマッチングの場を提供するとともに、家族のカタチが多様化する時代にあわせた最新情報を発信しています。 ▽離婚、夫婦問題の課題解決型メディア「リコ活」 (まいどなニュース/リコ活)
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