「選挙妨害」とは一体なんだろう?東京都知事選挙のタイミングでもう一度考えたい適正な選挙運動のあり方
選挙妨害って何?90年も前に示されていた「選挙妨害」の線引きとは?
そもそも「選挙妨害」とは、選挙犯罪となる行為で公職選挙法(昭和25年法律第100号)(以下、「公選法」といいます。)の罰則の章にで「選挙の自由妨害罪」という規定を設けて、以下のように規定されています。 選挙の自由が保障されることは、選挙が公正に執行されるための基本的条件であり、この選挙の自由を妨害する行為は、最も悪質な選挙犯罪といえるものです。 (選挙の自由妨害罪) 第二百二十五条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。 一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。 二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀き棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。 三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。 公選法第225条各号の犯罪が成立するためには、これらの犯罪行為が「選挙に関し」なされる必要があり、この犯罪行為を行う者に制限はありません。また、被害者は、選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人とされています。 「つばさの党」の5月17日の1回目の逮捕と6月7日の再逮捕の根拠となったのが公選法第225条のうち第2号に規定する「演説を妨害し」と「交通の便を妨げ」の2つの容疑です。 ここで裁判の結果をみますと、選挙妨害と認定され、有罪となった判例も存在します。 古くは、昭和7年5月の大審院(現在の最高裁)判例です。 この判決では、演説者をののしり、約1分間にわたって連続で拍手をするなどして選挙演説の続行を難しくさせた事案に対して、こうした妨害行為の結果が選挙演説会場を混乱に陥れて選挙演説の継続を不可能とさせた「重大な場合」と、選挙演説を邪魔して進行しづらくしたような「軽易なる場合」と区別せずに演説妨害罪が成立すると判示しました。 つまり、妨害のレベルが大規模でも小規模でも全て「演説妨害罪」に当たるということを、90年も前に司法が判断を示していたのです。 そして、昭和29年11月大阪高裁判決では、「演説の妨害となることを認識しながら他の野次発言者と相呼応し、一般聴衆がその演説内容も聞き取りにくくなるほどしつこく自らも野次発言あるいは質問等をなし、一時演説を中止せざるを得なくした行為」を演説妨害罪に該当すると判断しており、東京15区補選での行為とも通じるものがあると受け取れます。 この大阪高裁判決では、もう一つ重要な解釈を示しています。「妨害の故意を認めえないような単純な野次等は、一般の演説においても認容されている程度のものである限り、演説妨害行為とはみられないだろう」とし、1人が発言するようなヤジすらも規制することには一定の歯止めをかけています。 このほか、例えば、候補者が街頭演説をしている所へ他の候補者の選挙運動用自動車を乗りつけ、演説を妨害するために、レコードの音楽をかけて演説を聞こえないようにすることは、演説妨害となりうるとの解釈を示すものもあります。 また、特定候補者の選挙運動用自動車を長時間、執拗に追跡して、速度をあげさせたうえ、進路変更を余儀なくさせ、拡声機で威圧的な言動を投げかける行為などは「交通の妨害」に当たるとされ、捜査が続いています。