「私は何を質問したいのか」ChatGPTの驚きの答え、ChatGPTは「いい質問」を作れるか?
「いい質問」を出すことは、昔から重要だった。ChatGPTの能力が向上し、質問さえあれば答えが得られるようになってきた。では、ChatGPTは「いい質問」を作れるか? 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第136回。 ■それはいい質問だ It's a good question. これは、50年前、私が初めてアメリカに留学したときに聞いた言葉である。「それはいい質問だ」という意味。日本語ではそれまで聞いたことがない表現だった。
文字通りの賛辞ではなく、「聞かれたくないことを聞かれたときや、即答できないときの時間稼ぎの表現だ」との解説がある。確かにそうした場合もあるのだが、私が経験した多くの場合は、率直な賛辞だった。 日本の教室では、質問はわからないことを教えてもらうためにするものだと考えられている。だから、質問者は自分の理解能力が低いことをさらけ出しているとみなされる。多くの質問者が、質問の最初に「すみませんが」などと言うことに、この気持ちが表れている。
質問をしたら褒められたなどという経験が全くなかった私は、「It's a good question」に驚き、実に新鮮な気持ちを味わった。その後、アメリカの教室では、これはきわめて頻繁に聞かれる言葉であることを知った。 学生の側も、この言葉を聞きたくて質問する。一方、教師の側でも、質問によって自分が利益を得たことに対する感謝の気持ちがあるのだろう。実際、質問を受けた教師こそ、最大の利益者である。「よい質問」を受けたことで、教師も新しい世界を開くチャンスを得たからだ。
私は、日本に帰って教壇に立つようになってから、アメリカの教師の真似をして、「それはいい質問だ」を連発するようになった。その都度、大きな利益を受けたと実感したからだ。 ■テーマがあれば、地球を動かせる 上で「質問」と言ったことを、「テーマ」と言い換えてもよい(ただ、テーマはもっと全体的で体系的なものを指すことが多い。質問は断片的で、体系的とは限らない)。 論文を書くのに最も重要なのは、「いいテーマ」を選ぶことだ。それができれば、論文の8割はできたようなものだ。アルキメデスの真似をして、「私にテーマを与えよ。そうすれば地球を動かして見せる」と言ってもよい。