「排ガス対策・静か・高回転」 常識を覆したマツダのディーゼル
圧縮を下げたので、このままでは当然パワーが出ない。だから条件がよい時はターボで空気をガンガン送り込んで圧縮を補うことにしたのである。となればこのターボがエンジンの性能に及ぼす影響は大きい。そこでレスポンスを担当する反応重視の軽く小さなターボと、高負荷域を担当する大型ターボのふたつを使って、全域での性能向上を狙ったのだ。 従来のディーゼルエンジンが基本を高性能化に置き、排ガス対策の引き算を行うのに対して、マツダは排ガス対策を基本に高性能化を足し算で行うと言うコペルニクス的転換を編み出したのだ。 ■MTで乗りたくなる吹け上がり ここでマジックが発生する。マツダの新方式ではターボで空気を詰め込んでも総合的な燃焼のピーク圧力は他社に比べて低い。一瞬残念に聞こえるが、実はここにメリットがあった。ピークが下がることでディーゼルの大問題のひとつ、ガラガラ音が激減したのだ。さらにピストンやクランクなどの部品の強度設計に余裕ができ、さらに鋳鉄製じゃないともたなかったブロックをアルミに置き換えることにまで成功する。軽量ディーゼルエンジンの誕生だ。しかも回転部品の重量が減ったことで、エンジンの高回転化も可能になった。 冒頭に書いたディーゼルのデメリットを思い出して欲しい。 ・ガラガラとうるさい ・エンジンが重い ・高回転は全然回らない ・排気ガスの浄化度がガソリンに及ばない ・ガソリンエンジンに比べて価格も高い スカイアクティブDはこれらのデメリットをほぼ全ての項目で改善することに成功したのである。もちろん項目によって達成レベルは異なる。しかし全体として完璧なディーゼルエンジンに近付いたことは事実である。 このスカイアクティブDを搭載したマツダ・アテンザXD(6MT)に試乗した沢村慎太朗氏によれば、ディーゼルらしい怒涛の暴力的低速トルクこそないが、トルクの出方はふわっと優しく厚く、過去に記憶の無い気持ちのいい加速を実現している。しかもその優しく厚いトルクは下から上まで気持ちよく出ていて、低速トルクと引き換えに高回転でがっくりと力を失う従来のディーゼルエンジンとは一線を画すものになっているという。