「排ガス対策・静か・高回転」 常識を覆したマツダのディーゼル
逆に言えば、静かで気持ちよく回り、価格が下がって排気ガスがキレイになれば、完璧なエンジンが出来上がる。もちろんガソリンエンジンに低速で十分なトルク特性を確保し、燃費を向上させても同じだ。エンジンとは機能部品だから、結果が全てなのである。 ディーゼルエンジンの仕組みは割とシンプルだ。まずは空気を吸い込む。この空気をピストンで圧縮して行くと、物理法則に従って温度が上がって行く。十分に温度が上がったところにノズルから霧状の燃料を噴射すると、点火プラグで火をつけなくても温度の影響で自然に発火する。着火のタイミングは燃料の噴射時期で決めるのだ。 ピストンエンジンは、燃焼前の圧縮が高ければエネルギー効率が上がる。なので出来るだけ圧縮を上げたいのだが、事前に空気と燃料が混ざっているガソリンの場合、あまり圧縮し過ぎると早期着火などの異常が起きてエンジンが壊れてしまう。その点ディーゼルは圧縮する時にはただの空気なので圧縮を高めても早期着火はあり得ない。その結果、より高圧縮にできるから燃費が良くなるのだ。これがディーゼルの最大のメリット、省燃費の理由だ。 ■排ガス対策は永遠の“モグラたたき” 排気ガスの問題はどうだろうか? ディーゼルの場合、問題となる汚染物質はふたつある。光化学スモッグの原因となる窒素酸化物(NOx)と黒煙(PM)だ。光化学スモッグについては昭和40年代から問題となっていたのでご存じの方が多いと思う。しかしPMについては従来あまり指摘がなく、冒頭に述べた石原元都知事のパフォーマンスで広まったと言っても良い。近年はPM2.5の問題が話題になっているので、だいぶ深刻に捉えられるようになった。 問題はこのふたつの汚染物質がトレードオフの関係にあることだ。燃焼をコントロールして排気をキレイにしようとするのだが、簡単に言って速く燃やすとNOxが、ゆっくり燃やすとPMが出る。あちらを立てればこちらが立たずの板挟みなのだ。優柔不断を決め込んでも仕方が無いので、現在の技術トレンドでは燃焼時にはNOx抑制を優先することになっている。