スノボの歴史を変える16歳・鬼塚の存在
日本の女子スノーボードの歴史が変わろうとしているのだろうか。鬼塚雅の存在は、その可能性を感じさせる。 先日行われたスノーボードの世界選手権を制したランで見せたキャブ900(スイッチスフロントサイド2回転半)から、バックサイド720(2回転)へのスムーズな流れには余裕が感じられ、それぞれをスタイリッシュに決めると、鬼塚は滑りきった後に無邪気にガッツポーズをみせたが、それがランの完成度を象徴していた。 16才3ヶ月での頂点は、種目そのものの歴史が浅いとはいえ、史上最年少だそう。 早くから、注目を集めてきた。5歳でスノーボードを始めると、8歳でスノーボードのトップメーカー、バートンと契約。その後、ジュニアの大会で好成績を残し、2012年には、バートンが主催する「ヨーロピアンジュニアオープン」のスロープスタイルで優勝。2013年には「オニール・エボルーション」のビッグエアーを制している。 彼女はまた、2011年に「VOLCOMピーナッツバターチャンピオンシップ」というジブコンテストでも優勝。スロープスタイルは、ハンドレールやボックスのジブセクションとエアーを決めるキッカーのジャンプセクションで構成されているが、彼女は、それぞれの種目で結果を残してきた。今回の世界選手権制覇は、そうしたそれぞれの実績の延長線上にあるといっていい。 ただ、彼女にとって、世界選手権はあくまでも通過点だ。決して世界の頂点に立ったわけではない。おそらくそのことは、彼女が一番理解しているのではないか。 例えば、今回の世界選手権には、昨年のソチ五輪で同種目を制し、この種目では女王と呼ばれるジェイミー・アンダーソンが出場していない。先週、ESPN主催の「Xゲーム」のスロープスタイルを連覇したシリエ・ノレンダール、 TTR(世界スノーボードツアー)の女子スロープスタイルランキングで3位のクリスティ・プライアーも出場を見送った。同ランキングで鬼塚は6位だが、上位5人はいずれも世界選手権を欠場したのだ。 日程が、ほぼXゲームと重なったためで、世界選手権では鬼塚に次いで2位に入ったアンナ・ガサーは、両大会に強行出場したものの、アンダーソンらはXゲームを優先している。もっとも主力が参加しなかったのは女子のスロープスタイルだけではなく、他の種目の選手も同様。フリースキーの選手らも、「世界選手権を主催するFISが日程変更の話し合いに応じてくれなかった」として、ボイコットした。