2024年M1、松本人志さんの抜けた役割は誰が担ったのか、審査員9人は最適なのかをデータで確認する
最低得点は87点(アンタッチャブル柴田さんがトム・ブラウンに対して)、最高得点は97点(多数)でした。 赤(高得点)と緑(低得点)の色を俯瞰して見ると「令和ロマン、真空ジェシカ、バッテリィズ、エバースの得点が高いな」「ともこ姉さん高得点多いな、笑い飯哲夫さん低得点多いな」と分かります。 こうしたコンテストの採点方式として、1組目を基準に設定して「それを上回るか否か」とすることが多いです。M1の場合、誰が言い始めたのか「1組目90点方式」(1組目は不利だから+1点か+2点するとかしないとか)。 ところが、去年も今年も令和ロマンが面白過ぎた。そういう面白い漫才コンビが出だしに登場した結果、90点か91点を付けて基準にしてしまうと、後から登場する漫才コンビと差を付け難くなってしまうのではないか、と長らく指摘されています。 それが24年の哲夫さんであり、23年の松本人志さんだったのではないでしょうか。23年は大吉先生と山田かつてない邦子さんが、さや香に対してメリハリある得点を付けたのですが、松本人志さん的には「でも令和ロマンよりは…」と深く悩んだ結果、その後もかなり採点に苦労された印象が残っています。
一方で「面白かったら90点基準とか気にせず高得点にしたらええねん」と教えてくれたのが、ともこ姉さん(97点)であり、大吉先生・石田教授・かまいたち山内さん(96点)でした。 特に「さすがプロだ」と感嘆したのは、96点の後、ヤ―レンズに91点を付けて、真空ジェシカに97点を付けた、かまいたち山内さんです。ブレない採点基準があるんだろうな、と思いました。 ただ、総じて標準偏差の小さい審査が多かったと思います。2.00点未満が9人中4人(44.44%)もおられました。ちなみに過去を振り返ると、23年は7人中2人(28.57%)、22年は7人中1人(14.29%)、21年は7人中2人(28.57%)、20年は7人中3人(42.86%)、19年は7人中0人(0.00%)、18年は7人中1人(14.29%)、17年は7人中3人(42.86%)でした。 00年代は最低得点として50点も出ていました。極めて標準偏差の大きい審査だったのです。それなのに10年代になって最低得点は80点前半まで引きあがり、20年代は80点後半まで高まっています。それだけ漫才が上手いということでもあり、差が付け難いということでもあります。 そんな中、なるべく点差を広げ、同じ得点を付けようとしない松本人志さんの採点方式は、もっと賞賛されてしかるべきだと思います。22年は86点~96点まで、ほぼ1点差でキレイに刻みました。筆者は、これを「審査員としての覚悟」だと考えています。それ以前の回も、基本的には同じ得点を避けようとする傾向にあります。 今回、そうした採点に限りなく近かったのが大吉先生であり、アンタッチャブル柴田さん、石田教授でした。 もちろん、塙さんのように90点~95点の間で刻むのも「覚悟」です。つまり、採点の傾向を読み込むと、何かしらの覚悟を持っているとデータから伝わってきます。 毎年思うのですが、M1の「本気度」がどんどん高まり、笑いの大会なのに笑えなくなりつつあります。審査する人を審査するようになり、審査する人を審査する人が審査されるようになっています。ただし、よくよく考えてみると、そもそもが「お笑い」に点数を付けるなんて言っている方が無茶なのです。無茶を道理にするために、何かしらの覚悟も必要です。 松本人志さんからの評価は何者にも代えがたいかもしれません。しかし、松本人志さんの意志と覚悟は、どうやら受け継がれたみたいです。それが分かっただけでも胸が熱くなります。