「パーカー騒動」で吠えている“令和おじさん”の正体、「パーカーがおじさんぽい人」「ぽくならない人」の差
スティーブ・ジョブズは自身を象徴するスタイルとして、イッセイミヤケの黒のタートルネックとリーバイスの501を選んだ。そして現代のジョブズことマーク・ザッカーバーグは、Tシャツとパーカーを自身のアイコンとして選んでいる。両者に共通するのは「仕事以外の決断の数を減らす」という信念だ。 妹尾さんがディスった“打ち合わせにパーカーで出てくるおじさん”は、このザッカーバーグの影響が大きいはずで、たしかにスタートアップ系や代理店、クリエイティブ系のおじさんに多い気がする。
ザッカーバーグのTシャツとパーカーはイタリアの超高級ブランド「ブルネロ・クチネリ」のもので、それを1ダース揃えられるのは富裕層だけになってしまうが、同じようなニュアンスを取り入れたいならニット専業メーカーのニットパーカーを選ぶといい。 240年の歴史を持つイギリスの「ジョン スメドレー」のニットパーカーは、30ゲージのエクストラファインメリノウールを採用。ニットならではの温かみのある上品なデザインは、大人にこそ似合う品格が漂う。これにウエストがドローコードのスラックスタイプのイージーパンツを合わせれば、妹尾さんからもお許しが得られるかもしれない。
■新アイテムのフードマフラーって手もある コロナ後のZ世代のファッション好きの間で流行っているのが、頭、首周りをおおうファッションだ。コロナ禍にマスクで顔周りを隠すことに慣れてしまったがゆえに台頭したトレンドで、彼らに独占させておくのがもったいないと思うのが、フードとマフラーを一体化させたようなデザインのフードマフラー(フーデッドスカーフ)。 寒い時にあると便利だし、パーカーのスポーティな雰囲気を手軽に演出できるというメリットもある。おじさん世代におすすめしたいのが、確かなモノ作りで人気の高い日本のブランド「サイ」のフーデッドスカーフ。さっと巻いたり、かぶるだけで、妹尾さんも振り向く洗練されたおじさんになれるだろう。
結論。パーカーをビジネスの場で着るのは職種によるし、もちろん若者のほうが似合うのはその通りだけれど、少しの工夫でおじさんでも十分ファッショナブルに楽しめるアイテムである。 機能的な観点でも末端が冷えがちなおじさんとの相性は抜群なので、あまり人目を気にせずガンガン着ちゃえばいいのだ。もちろん若い世代の意見を聞くのは大事だけれど、令和のおじさん像は自分たちで更新していけばいいのである。
増田 海治郎 :ファッションジャーナリスト