偉大な作家エドガー・アラン・ポーの死の謎、最期はなぜか他人の服を着用、狂気か殺人か
毒を飲んだのか
ポーは毒に侵されたという説もある。薬を飲んだのか、ガス灯による一酸化中毒か、はたまた別の種類の毒にやられたのか。しかし、現代科学によってこれらの説はほとんど否定されている。 ポーの遺体は、現在の墓と記念碑がある場所に最終的に埋葬されるまで何度も掘り起こされており、2000年代初めにはポーとその妻だったバージニアの毛髪が化学分析にかけられた。 するとポーの毛髪には、現代人よりも高い濃度のヒ素、鉛、水銀、ニッケル、ウランが含まれていたことがわかった。しかし、いずれも毒による死を示唆するほどの量ではなかった。
病気、うつ、それとも……
ポーが殺されたと考える者もいる。歴史家のジョン・エバンジェリスト・ウォルシュ氏は自著『Midnight Dreary(真夜中の陰うつ)』のなかで、ポーが裕福なシェルトンと結婚しようとしていたことにシェルトンの兄弟が腹を立て、ポーをリッチモンドから追い出し、その評判を貶めようと酒を飲ませた。それが原因でポーはアルコール中毒を起こし、命を落としたのではないかと書いている。 ほかにも、狂犬病、髄膜炎、脳腫瘍など様々な説が飛び出している。腫瘍説は、ポーの遺体が掘り起こされたときに、空っぽだった頭蓋骨のなかに腐敗していない大きな組織の塊が転がっていたという目撃証言から生まれた。脳は体の中で最も早く分解することから、作家のマシュー・パール氏はこの塊が石灰化した腫瘍ではないかと考えている。 とはいえ、もっと普通の説の方が説得力はある。アーミエント氏によると、ポーの専門家たちは、風雨にさらされて結核が悪化したという説に傾いているという。ポーの妻のバージニアは結核で死亡しており、他にもポーの周囲で結核にかかった人は多かった。 皮肉にも、その死にまつわる謎が、ポーの遺産と死後の名声に大きな役割を果たすことになった可能性が高いと、アーミエント氏は言う。推理小説やホラーというジャンルを切り開いた天才的な作家自身が奇妙な死を遂げたことは、これからも学者や科学者たちの興味を引き続けることだろう。
文=Erin Blakemore/訳=荒井ハンナ