偉大な作家エドガー・アラン・ポーの死の謎、最期はなぜか他人の服を着用、狂気か殺人か
アルコールか、薬物か
ポーは酒に弱く、少し飲んだだけでひどく酩酊した。多くの友人や知人は、ポーの死と、それに至るまでの奇行にアルコールが大きく関係していたと考えた。 しかし現代の歴史家は、酒を飲んだときのポーの幻覚や奇行がアルコール依存症とは関係がないだろうと考えている。ポーは確かに酒を飲んだが、禁酒していた時期も長く、死ぬ前には当時米国で盛んだった禁酒運動を熱心に支持していた。また、地元の禁酒協会に所属し、何度か講演を行って好評を得ていた。 禁酒を支持する風潮のなか、世間はポーが抱えていたアルコールの問題を死因として大げさに取り上げてしまった可能性がある。またはポーのライバルが、ポーの評判を傷つけるためにアルコール依存症というレッテルを貼ったのだろうか。 禁酒運動を支持する新聞は、ポーが「誓いを破って」アルコールで死亡したと主張したが、その説は今も証明されていない。また、アヘンなどの薬物を使用していた形跡もない。
クーピングか、暴行か
ポーはクーピングの被害にあったという説がある。クーピングとは、政党の工作員が有権者を誘拐し、偽名を使って不正投票させる行為のことだ。 ポーの死から10年以上たってから、ボルチモアのウィリアム・ハンド・ブラウンというポーのファンが、ポーの伝記作家にこう証言した。「ポーがそういう連中に『クーピング』され、酒を飲まされて投票所に連れて行かれた後放り出されて死んだと、ここでは信じられていますよ」 もしそうであれば、他人のだらしない服を着ていた理由の説明がつく。普段から服装に気を遣っていたポーにはまるで似つかわしくない格好だった。また、当時のボルチモアでは不正投票が蔓延していた。 それともポーは、ボルチモアに行く途中で何者かに襲われ、その結果「脳充血(congestion of the brain)」を起こしたのだろうか。今では使われなくなったこの用語は、気分障害、頭痛、脳への損傷、またはてんかんの発作など様々な症状を指して使われた。