「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人気ゲームを直撃した「スパイ疑惑」とは?
最高機密扱いの米施設周辺にレアなポケモンが続々と出現し、CIAでは異例の「ポケモン禁止令」にも発展。「まさかの疑惑」の全貌に迫る──
アメリカの情報機関が2016年の夏、職員に向けてメッセージを発した──あなたがピカチュウの捕獲にのめり込むと、国の安全保障が危険にさらされる可能性がある、と。ポケモン(ポケットモンスター)キャラクターを隠れみのにして中国政府がのぞき見しているかもしれない、とのことだった。 【衝撃】イスラム国と戦うアメリカ兵が機関銃を構えながら「ポケモンGO」をプレイして話題に この年の夏、スマートフォン向けGPS位置情報ゲームの『ポケモンGO(Pokémon Go)』が世界中で大ブームになっていた。アメリカでも毎日何千万人もの人たちがポケモンを捕獲しようと、スマホを片手にあちこち歩き回る姿が見られた。 その頃、デジタルスパイ活動が新時代に突入しようとしていた。ユーザーがデジタルゲームを楽しんだり、アプリやオンラインプラットフォームを利用したりすることで民間企業に譲り渡している情報は、情報機関にとって喉から手が出るほど欲しいものだ。 そこで情報機関は、そうしたデータを盗み出したり、買い取ったりし始めていた。 ポケモンGOの目覚ましいヒットは、株式会社ポケモンとの共同開発のナイアンティック社(Niantic)に思わぬ難題の数々を突き付けた。 米サンフランシスコに本社を置くナイアンティックは、もともとはグーグルの社内スタートアップとして出発し、15年にスピンオフして独立企業になった。同社は、ポケモン関連のビジネスを展開する株式会社ポケモンからこのゲームを開発する権利を取得した。 16年にポケモンGOをリリースした時点では、ナイアンティックもポケモン社も、地政学上の落とし穴の有無をあらかじめチェックする専門のスタッフを擁していなかったと、ポケモン社の最高法務責任者を務めたドン・マゴーワン(Don McGowan)は振り返る。 そこで、同社に加わる前にマイクロソフトの対政府関係部門でサイバーセキュリティーを担当した経験を持つマゴーワンにお鉢が回ってきた。 「ナイアンティックは、ポケモンGOがこれほどまでにヒットするとは思ってもいなかった」と、マゴーワンは述べている。 マゴーワンは、誰も予想できなかった問題に対処することになった。ある日、ボスニアの地雷原でポケモンを探す人たちがいるというニュースを読んで驚いたことがあった。このときは、ワシントンに急行して国務省当局者に相談した。 すると、「機密扱いになっている以外の、世界の地雷所在地のGPS情報を全て記した書類」を手渡されたという。その情報を直ちにナイアンティックで共有し、その場所ではゲームができないようにした。