「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人気ゲームを直撃した「スパイ疑惑」とは?
世代間ギャップが浮き彫りに
NSAだけではない。CIAでは職員に「長文の『ポケモンGO禁止』メールが届いた」と、ある元職員は振り返る──CIA流にゲーム名はぼかしてあったが。 だがポケモンGOをめぐる緊急警告に多くの米当局者は懐疑的だ。エネルギー省の元職員によれば、アメリカの核兵器研究の中核であるロスアラモス国立研究所の職員らは同省の専門家からのメモを「笑える」と思ったそうだ。 「ほぼ全員がポケモンGOをやっていた」からだ。 NSAでも多くの当局者がポケモンGOの懸念は杞憂だと考えていた。「ノンブーマー(ベビーブーム世代を軽蔑する若い世代)っぽくするなら、『ポケモンGOはいいOPSEC(オプセク、日常業務上の最低限の安全対策)じゃないから使うな』とでも書けばよかったんだ」と1人目の元NSA職員は語った。 だが実際のメモはそれとは程遠かったという。「ベビーブーム世代っぽい代物で......フォントサイズ36の(ダサいと撲滅運動まで起きた)コミックサンズ書体で2ページ、フォーマットもお粗末で、こんな調子だった。『やあ、みんな、ポケモンGOはナイアンティックというわれわれの知らない企業が出している中国のスパイアプリで、君たちのカメラを使って君たちが歩き回っている世界の3Dモデルを構築し、生活パターンを基に情報収集をしているから使用禁止だ』」 だが「どれ1つ真実ではなかった」と元職員は言う。「ナイアンティックはごく普通の企業」で「妙なメールに大勢の職員が引いた」。多くの職員は『うるさいな、局内の至る所でポケモンGOをやってやるぞ』的な反応を示した」という。 この大騒ぎの間、マゴーワンにはCIAからもNSAからも直接連絡はなかったが、エネルギー省からは立て続けに電話があり、相手は皆、動揺した様子だったという。 「『最高機密扱いの核施設内にポケストップがある』みたいに言われ、私はこう答えた。『分かった、ナイアンティックに話して撤去してもらおう。だが、はるかにでかくて厄介な問題がある。つまり誰かがエネルギー省の最高機密扱いの施設内で写真を撮り、それをGPS座標付きの第三者アプリにアップロードしたということだ。施設内にポケストップがあるなら、そういう経緯だ」 どうやらエネルギー省の防諜責任者たちは(固定された)ポケストップと、アプリの入ったスマホが近くにあれば神出鬼没のポケモンたちを混同していたようだ。 同省の一部の施設では、とんでもない場所にポケモンが現れ始めた。